失敗を繰り返している人の共通点
まわりを見渡すと、私も含めて、うまくいってない人には、共通点があることに気づきました。
それは、現実を受け入れられないこと。
心理学では、今の自分を受け入れられないことを「認知的不協和」というそうです。
私は「こんなのは本当の自分じゃない、明日の自分はもっと良くなるはず」と常に不満を抱えていました。
そして、理想が高ければ高いほど、理想と現実には大きなギャップがあるのに、そのギャップから目をそむけ、安易に手っ取り早い楽な方法に走ったり、自分に合っていない方法をとったりして失敗。
すぐに結果を出したくて、自分では近道のつもりが、むしろゴールから遠ざかっていたのです。
マイナス思考で金縛り状態に

結局、自分の理想には近づけず、卑屈になったり、うまくいっている人をうらやんだりするようになっていきました。
そんな自分がイヤで、食べることで気をまぎらせようとしたり、買い物でストレスを発散しようとしたり、ダラダラとネットサーフィンしたり、むさぼるように本を読んだり…
あげくの果てには、悩み過ぎて身動きがとれなくなってしまうという始末。
過去の失敗が頭の中をぐるぐるとかけめぐり、「また失敗するんじゃないか」という恐怖や不安におそわれて、金縛り状態になってしまうのです。
意志と想像力が一致すると、和ではなく積に⁉
誘導自己暗示による治療で、世界的に有名なフランスの医学者エミール・クーエ氏によると、意志と想像力には以下のような法則があるそうです。
法則1 意志と想像力が争えば必ず想像力が勝つ
法則2 想像力は意志の力の二乗に比例する
法則3 意志と想像力が一致すれば、その力は和ではではなく積である
法則4 想像力は誘導が可能である
な、なんと!
この法則3によれば、意志と想像力が一致すると、そこから生み出される力は、意志と想像力をかけ合わせたものになってしまうなんて!
また失敗するんじゃないかと思いながら、過去の失敗をありありと想像するなんて、私はなんとおそろしいことをしていたんだろう。
そりゃあ、失敗が怖くて動けなくなるよね…
そんな、失敗が怖くて動けない自分を正当化しようと、忙しくてできないとか、自分には向いてないんだ等と言い訳をしはじめ、ますます動けなくなっていき…
私はなんて弱い人間なんだろう。向上心はあるのに、どうしてこうなっちゃうんだろう。
現実を認めると、金縛り状態から解放されるー自己受容と肯定的なあきらめ

いつものように悩んでいると、突然、私の中で何かがふっ切れました。
そうだ! 私は、今の私でいいんだ。欠点があってもいいし、悩みがあってもいい。心がそれにとらわれて金縛り状態になり、動けなくなってしまうのがいけないんだ。
悩んでいるひまがあったら動こう。今の私がやるべきこと、やれることをやろう。
心理学者の多湖輝さんの『まず動く』という本には、次のように書かれています。
弱さ、弱点、弱気など素直に認めたらよいのです。弱さにとらわれないとは、それをまず認めることです。
認めてしまえばそれであたりまえになって、どうして自分はこんなに弱気なんだろうと悩んだり、とらわれたりすることがなくなります。
今ある自分の性格、姿、環境を認めてしまう。悪い状態がよくなったらよくなった状態を認めるのではなく、今のその状態をそのまま認めてしまう。
認めたうえで自分の生き方を考えてみる。認めるということは、とらわれない、それに心が引っ張られない、ということです。
そうすれば心の悩みや、とらわれから解放されますから、次の行動がしやすくなる、ということになります。
よし! 今の弱い自分を認めたうえで、自分に何ができるか考えてみよう。
まずは現状をしっかり把握し、自分に足りないところを少しずつうめていこう。
「自己受容」とは、ありのままの自分を受け入れること。ことさらポジティブになって、自分を肯定しようとする「自己肯定」とは違います。
例えば、本当は英語が苦手なのに「私は英語ができる」と自分に暗示をかけるのが「自己肯定」で、自分に嘘をつく生き方ともいえます。
それに対して、英語が苦手な自分を受け入れたうえで、できるようになろうと前に進んでいくのが「自己受容」で、自分に嘘をつくものではありません。
できない自分を認めることは、悲観的なようにも思えますが、自己受容は「肯定的なあきらめ」と言いかえることもできます。
「あきらめ」と言うと「諦める」という否定的なイメージを連想してしまうかもしれません。
でも、もともとは「明らめ」と書いて、はっきり見定める、判別するという意味があります。
つまり「肯定的なあきらめ」とは、「変えられるもの」と「変えられないもの」を見極めること。悲観的なものではないのです。
そして、自分に与えられているものは、「変えられない」のでそのまま受け入れ、自分に与えられたものをどう使うかは「変えられる」ので、変えていく勇気を持つのが自己受容です。
例えば、アメリカ人のようにペラペラ英語を話せるようになりたいと思っても、アメリカ人になることはできないので、日本人である自分を受け入れる。
でも、言葉をしゃべること自体はできるので、少しでもアメリカ人の英語の発音に近づけようとする勇気を持つ。それが、自己受容なのです。
これからどうするか
こうして、私はようやく本当のスタート地点に立つことができました。
過去の失敗も含めて、ありのままの自分を受け入れることで、着実な一歩を踏み出す準備ができたのです。
それからは、エミール・クーエの法則3(意志と想像力が一致すれば、その力は和ではなく積である)をプラスに活用して、
うまくいくと強く思いながら、少しずつ着実にステップアップしていく自分を強くイメージするようにしてみました。
私は英語のリスニングが苦手なのですが、以前の私は、早く英語を聴きとれるようになりたいと、「これをやればすぐにリスニング力がアップする!」的な教材にばかり手を出していました。
でも、残念ながらリスニング力は上がらず、いつも「どうして私はダメなんだ」モードに…
そこで、私には何が足りないんだろう、と英語のリスニングをしているときの自分を、客観的にながめみました。
すると、いつも英語を聴いていると私の耳に入ってくるのは、英文の最後の方の「Yesterday(きのう)」とか、Tomorrow morning(明日の朝)」であることに気づきました。
英語は、文頭に主語と動詞が来て、大事なことを先に言う言語。それなのに、私は文末に動詞が来て、大事なことを最後に言う「日本語モード」のまま、英語を聴こうとしていました。
英語を聴いているときも、日本語を聴いているときと同じように、文の最後の方に意識を集中させていたのです。
英語を聴くときは、「英語モード」に頭を切り替えなければいけないんだ!
私は、ようやく自分に何が足りないのか気づき、それからは、英語を聴くときは日本語モードから頭を切り替えて、文の最初の方に意識を集中するようにしました。
そして、エミール・クーエの法則3(意志と想像力が一致すれば、その力は和ではなく積である)をプラスに活用して、
英語が聴き取れるようになっていく自分をイメージし(想像力)、私にもできると思いながら(意志)、英語のリスニングの勉強をしてみました。
すると、嬉しいことに、少しずつ英語を聴きとれる範囲が広がっていったのです!
自分の弱点を素直に認め、自分を客観的に見つめることで、気づきを得ることができました。
悩む必要なんてない。欠点のない完璧な人間なんていないんだ。とにかく、自分に合った解決法を考えて動いてみる。
これが、多湖輝さんの言う「まず動く」ということなのだ、とさとった瞬間でした。