メールは5分以内、LINEは秒単位で返信⁉ 本当の友情って何だろう…

ティーンの間では、メールには5分ルール(!)があり、LINEにいたっては数秒で(!!)返信することが暗黙のルールになっているという。

相手がすぐに返信してくれると、自分のことを優先して大切にしてくれてるような気がして嬉しくなりますし、つながっているという安心感が持てたり、自分を認めてもらえてるんだと思えて自己肯定感が上がったりしますよね。

だから自分も早く返信しなきゃと思うのですが…

でも、すぐつながることってそんなに重要なのでしょうか、本当の友情とは何なのかについて考えてみたいと思います。

メールの返信が異常に早い友人と会ってみたら…

私の友人の中にもいつも即行でメールの返信をくれる子がいて、すぐに反応してくれるのは、私との友情を大切にしてくれているからだと思っていました。

ところが、その子が私に会いたいというので時間を作って会いに行くと、いつも手元に携帯電話(スマホ)を置き、通知が来るたびに夢中になって他の人とやりとりし始めたのです。

目の前に私がいても「ちょっと友達に返信してもいい?」等と断ることもなく…

しまいには、まるで私がそこにいないかのように、かかってきた電話に当然のように出て、全く電話を切る気配がないまま30分以上話し続けられたときには、さすがにドン引きしてしまいました。

そして、「私は別にここにいなくてもいいんじゃないか」という思いがこみ上げてきました。

すぐに反応することが目的に⁉

私はその時ようやく気づきました。

「そうか、この子にとっては、すぐ反応することが重要なんだ。すぐに返信するためなら、目の前に一緒にいる人がいても関係ない。メールでやりとりしていたとき、私との友情を大切にして早く返信してくれてるわけじゃなかったんだ」と。

ちなみに、他の友人は私と会っているとき、「今日は緊急で家族から連絡がくるかもしれないから手元に携帯電話を置いといてもいい?」と言ってから手元に携帯電話を置いたり、「ごめん、いま夫に返信してもいい?」等と一声かけてからスマホを操作したりします。

いま一緒にいる私と過ごす時間を大切にしてくれているのです。

私はそれが普通だと思っていたので、目の前の人間を無視してまで夢中になってスマホで他の人とやりとりする友人のことが理解できませんでした。

目の前にいる友達よりもネットの友達を優先するのは普通⁉

でも『ソーシャルメディア中毒 つながりに溺れる人たち』の著者の高橋暁子さんによると、ティーンの間では、目の前にいる友達よりもネットの友達を優先するのは普通(!)で、一緒にいるのにネットの友達を優先されても嫌だと思わない(!!)という。

ティーンにとっては、リアルでもネットでも友達は友達なので、目の前にいる友達とネットの友達が、今たまたま同じ空間にいないだけのことなのです。

仕事や家事、子育て等で忙しく時間に融通のきかない大人と違って、あまり時間に縛られないティーンは、相手も自分と同じようにすぐに反応できて当然だと思う人が多いようです。

既読スルーされると「すぐに返信できるのに返信しないなんて返信したくないからなんだ、私はないがしろにされた!」という思考回路になってしまうのです。

だからこそ、相手に自分は無視されてないがしろにされたと思われないよう、大急ぎでネットの友達に返信します。

ネットの友達を優先すると、結果として一緒にいる目の前の友達と過ごす時間を犠牲にすることになってしまうとしても…

「友達確認」「恋人確認」をする本当の理由―不自由な絆と「他者信頼」

でも一緒にいる目の前の人と過ごす時間を犠牲にしてまで、ネット上の他の人に急いで返信することって、そんなに重要なのかな?と思います。

すぐに反応しようとすると、あまり考える時間がなくて、自分の言いたいことをうまく伝えられなかったり、うっかり相手に(いや)な思いをさせてしまうような返事をしてトラブルになってしまったりすることだってあります。

とにかくすぐに反応しさえすればいいからと、極端に短い文や写真、スタンプだけを送ることは、コミュニケーションなのかな?と…

何かを伝えることよりも、とにかくひたすら連絡をとること自体が目的になってしまい、「友達確認」「恋人確認」をして安心するのは、コミュニケーションではなくて、心のどこかで相手を信じることができてないからのような気がします。

裏切られて傷つくことを恐れているから、相手を信じることができなかったり、すぐに反応がないからとブロックしてしまったりするんじゃないかと思います。

もし友達や恋人のことを信じていたら、そんな頻繁に連絡をとらなくても大丈夫です。

不自由な絆と「他者信頼」
指先一つの簡単な操作で気軽につながれるからと、携帯電話やスマホでのメールやSNSなどのネット上のやりとりが、重要なコミュニケーションツールの一つになりました。

でも、つながりたいときに気軽につながれると思って始めたはずが、気づけば常に誰かとつながっている状態になり、しがらみで不自由になっている人も多いんじゃないでしょうか。

人と人のつながりである人間関係は目に見えないので、不安な気持ちを打ち消そうと、人は常につながることで絆(きずな)を確かめたり安心感を得たりしようとしがちだからです。

確かに人間関係は目に見えませんが、相手を信じて疑わなければ不安な気持ちにはならないはずです。

裏切られて傷つくことを恐れているから「この人は表向きだけ仲良くしてくれてるだけかも」等と不安になり、常時「友達確認」したくなってしまうのではないでしょうか。

もし本当に他の人と友達になりたかったら、まずは自分から裏切りを恐れずに無条件で相手を信頼すること(他者信頼)が必要です。

 他者信頼
他の人との関係をよくするために、横の関係(すべての人は対等)を築いていく手段として、他者を無条件に信頼すること(裏切りを恐れず、見返りを求めずに相手を信じる)

自分が疑っていれば相手もそれを察知してしまうので、そんな状況では自分も信頼してもらえず、良い人間関係を築くことはできないからです。

相手を疑って常時つながろうとするのをやめれば、自分も相手も「絆」という不自由なしがらみから解放され、自由に自分らしく生きつつ、良好な人間関係を築くための第一歩を踏み出すことができます。

 

すぐつながることよりも大切なこと

私の家族や友人たちの多くはそれぞれの生活があって忙しく、すぐに返信がくることはあまりありませんが、いつも心のこもったメールをくれます。

適度に自分の近況報告もしつつ、私や私の家族のことまで気づかうメールをくれるのです。

そのメールを読めば、すぐに返信がなくても自分のことを大切に思ってくれてることが伝わってきて、すごく幸せな気持ちになります。

すぐつながることよりも大切なのは、「相手に何を伝えるか」というメッセージの中身です
 
自分の近況も伝えつつ、相手を思いやるメッセージを書こうとしたら、ゆっくり落ち着いて文章を書くためのまとまった時間が絶対に必要で、すぐに返信できなくて当然なのです。
誰もが食事や睡眠などはもちろんのこと、家事や仕事、勉強、習い事など、それぞれ自分の生活があり、必ずしもすぐ反応できる状況にあるわけではないのだからなおさらです。
お互いにそれぞれの生活があることを尊重していれば、「いま手が離せないんだな」と、すぐに反応がなくても不安に思ったりイライラしたりすることはありません。
あまりにも返信がないときは、「何か事故にでもあったのかな?大丈夫かな?」と勝手に心配してしまうことはありますが(苦笑)。
 

交友を深める方法

もちろん、いつもお互いを思いやり尊重し合えるような深い交友関係は、一朝一夕(いっちょういっせき)に築けるわけではありません。

良い人間関係を築くためには、部活動やサークル活動、仕事や勉強、共通の趣味などを通じて一緒に多くの時間を過ごしたり、食事や旅行などを一緒に楽しんだり、

何か良いことがあったら一緒に喜んだり、悲しいときや辛い時は励まし合ったり、困っているときは助け合ったりする等、他の人のためにかなりの時間を費やしていく必要があります。

 
筆歌
そうは言っても、今はコロナ禍で学校や職場に行けなかったり、友人や知人と会う機会をあまり持てなかったりして、辛いところではあるのですが。特に学生の方々は、本当に辛いだろうなと思います。学校は学ぶだけでなく、友達と多くの時間を一緒に過ごして友情を築いていくための大切な場所でもありますからね。
他の人と交友を深めるためにはかなりの時間が必要なのに、いつも多くの人と頻繁にやりとりしていたら、他の人と深い仲を築く時間なんて作れません。
この人となら深い人間関係を築いていきたいと思える人を見つけるために、交友関係を広げることは必要ですが、ひたすらみんなと連絡を取り続ける必要はありませんし、知り合いの数が多いことが重要なのではありません。
ほんの一握りの「この人とだったら仲良くなりたい」「この人と交友を深めたい」と本気で思える人を見極める目を持つことが重要なのです。
交友関係を深めたいと思える人を見つけたら、見返りを求めずにその人を信じて、その人が興味を持っていること等に注目して歩み寄り、その人と過ごす時間を大切にします。
そして、自分のやるべきことや好きなことをしたり、自分のやりたいことを探したりしつつ、その人と時々会ったり連絡をとったり(「この時間にやりとりしよう」とお互いに都合のいい時間を決めるのもいいかもしれません)、感謝の気持ちを伝えたり、喜びも悲しみも分かち合ったり、切磋琢磨(せっさたくま)したり助け合ったりしながら交友を深めていくのです。
 

本当の友情とは

そうやって交友を深めた数少ない友人は、なかなか会えなくても、心のこもったメールでいつも自分を気にかけてくれる、かけがえのない存在になってくれます。

大事なのは、友人の数が多いことよりも、どれだけお互いを思いやって行動できるかという関係の深さです。

自分にも相手にもそれぞれの生活があるんだと、お互いを尊重し合い大切に思っていたら、ひたすら連絡を取って相手を拘束するようなことはしないはずですし、すぐに返信がなくても不安に思うことはありません。

交友関係を深めて本当の友達になるためには、四六時中連絡を取り合うような近すぎる距離ではなく、ときどき連絡をとったり会ったりするなど、手を伸ばせば届く程度の距離感を保つことが重要なのです。

本当の友情は、すぐに返信することではなくて、時間はかかっても、心のこもったメッセージを送って相手を思いやることなんじゃないかと思います。

参考文献
『嫌われる勇気』岸見一郎さん、古賀史健さん(2013年 ダイヤモンド社さん)
『幸せになる勇気』岸見一郎さん、古賀史健さん(2016年 ダイヤモンド社さん)
『ソーシャルメディア中毒 つながりに溺れる人たち』高橋暁子さん(2014年 幻冬舎さん)
『友情について』キケローさん、中務哲郎さん訳(2004年 岩波書店さん)

『デジタル・ミニマリスト 本当に大切なことに集中する』カル ニューポートさん、池田 真紀子さん訳(2019年 早川書房さん)
『孤独の価値』森博嗣さん(2014年 幻冬舎さん)
『コミュニケーションは、要らない』押井守さん(2012年 幻冬舎さん)