本当にやりたいことや新しいことに全力投球するために、やるべきことをスムーズに片付ける方法

ホコリとりモップで掃除

私たちの行動の40%以上は無意識のうちに行われている

朝起きて「今日は何を着ていこうかな?」、お昼になったら「ランチは何にしようかな?」、仕事帰りに「ジムで運動していこうかな?それとも買い物して帰ろうかな?」など、私たちは毎日いろいろな選択をしています。

これらの選択は自分でよく考えて決めたことだと思うかもしれません。

でも実はある研究によると、毎日の行動のじつに40%以上が「その場の決定」ではなく「習慣」で行われていて、私たちは自分でもわかっていない衝動(しょうどう)に動かされて無意識のうちに行動しているというのです。

え? そんなはずは… いつもデザートを買うとき超真剣に悩んで厳選してるし、レストランで注文するときだって量や値段も加味しながらよく考えて決めてるのに。

なぜカギをかけたことを忘れてしまうのか

三日坊主に終わらない科学的な方法を教えてくれる本『習慣の力〔新版〕』によると、ある時点で意識的に決めた行動を何度も何度も繰り返すと、やがて決定をしなくなり、その行動は無意識のもの、つまり習慣になっていくそうです。

その分かりやすい典型例がドアのカギをかける行為。

出かけるたびに玄関のカギを締めていると、あまりにも無意識のうちにカギをかけてしまうので、ときどき「あれ?今カギ締めたっけ?」とカギをかけたことを忘れてしまうのです。

なぜ同じ行動を繰り返すと習慣になるのか。脳は常に楽をしようとするからです。

脳には労力を節約するためにできるだけ介入しないで決まった手順を習慣にしてしまおうとする本能があり、歩いたり食べ物を選んだりするなど毎日繰り返される基本的な行動については習慣にしてしまって、常に考えていなくても済むようにしているのです。

習慣が生まれる仕組みが分かれば、新しい習慣を自分でつくって楽できる

ということは、脳が決まった手順を習慣にしようとする本能を活用して自分で新しい習慣をつくっていけば、いろんな行動が無意識のうちにできて楽できるということか!

ただし何でもかんでも習慣にしてしまって脳が楽をしていると、判断能力が落ちて危険を察知できなくなってしまう恐れがあります。

そこで、私たちの脳は判断能力の高い状態から判断能力の低い状態である「習慣」に切り替えるスイッチを作り、このスイッチがオンになっているときだけ「習慣」を使って脳の労力を節約しています。

では習慣に切り替えるスイッチはどんなふうに作動するのかというと、先ほどご紹介した『習慣の力〔新版〕』には次のように書かれています。

脳の中で起こっているプロセスは、3段階のループだ。第1段階は「きっかけ」で、これは脳に無意識で行うモードに切り替え、どの習慣を使うかを伝える「引き金」である。次が「ルーチン(きっかけに反応して起こる慣例的な行動や思考)」で、これは身体的なものだったり、脳や感情に関わるものだったりする。そして最後が「報酬」で、これは具体的なループを、将来のために記憶に残すかどうか、脳が判断する役に立つ。

時間がたつにつれ、この「きっかけ→ルーチン→報酬」というループは、どんどん無意識に起こるようになる。きっかけと報酬が相互につながると、強力な期待や欲求が生まれる。やがて、そこに一つの習慣が生まれる。

例えばカギをかける行為は、玄関を出てドアを閉めるという「きっかけ」によって、カギをかけるという「ルーチン」が起こり、防犯対策ができて安心という「報酬」につながると、カギをかけて安心して出かけたいという欲求が生まれて習慣になるのです。

つまり、この「きっかけ→ルーチン→報酬」というループにのせて習慣にしてしまえば、やならなきゃいけない面倒なことなどを機械的にこなせるようになり、そのための労力や気力をセーブして楽できるわけです。

脳の本能を活用して家事をスムーズに片づけるコツ

やらなきゃいけない面倒なことの一つに家事があります。

以前は、家全体の拭き掃除や掃除機がけなど時間のかかる家事は、仕事が休みの日にまとめてやっていました。

仕事で疲れているときや、休みの日もいろいろと予定があって忙しいときは、「あれもやらなきゃ、これもやらなきゃ…」とやる前から精神的に疲れてしまい、何とか時間を作って気合を入れて家事をするという感じでした。

そこで、家事と仕事に追われる日々を何とかしようと、時間のかかる家事を分散して計画的に日々の生活の中に組み込んでみました。

例えば、トイレ&浴室掃除の日、台所まわり等の拭き掃除の日、ホコリとり&掃除機がけの日…という具合に1日30~40分くらいで終わるよう家事を小分けにして、基本的に毎週同じ曜日に同じタイミングでやるようにしてみたのです。

毎週コツコツと同じように繰り返していると、いつの間にそれが潜在意識に刻み込まれて習慣になり、自分の意思でやろうとしなくても体が勝手に動くようになりました。

気合を入れて重い腰を上げなくても済むようになったのです。

ポイントは、どの家事もそれぞれ毎回愚直に同じ動作から始めること。

例えばホコリをとってから掃除機をかけるときは、まず始めに「きっかけ」として、ホコリとりモップを取りに行きます。

シンプルで分かりやすいことを「きっかけ」にした方がいいので、ホコリをとるのにモップが必要だからホコリとりモップを取りに行くことを「きっかけ」にするのです。

モップを取ってきたら家中の窓を開け、いつも同じ順番で自分にとってやりやすい箇所からホコリをとって掃除機をかけていきます。

このホコリをとってから掃除機をかける行為が「ルーチン」になります。

自分にとってスムーズな流れを見つけるために、最初のうちは居間から始めたり台所から始めたりと、いろんな順番で掃除してみます。

当たり前ですが、しっかり丁寧に掃除すると家中がキレイになってスッキリします。

私は掃除機をかけ終わった後にサイクロン式掃除機の中にたまったゴミを捨てるのですが、たまったゴミを見て「今日もこんなにゴミが取れたんだ!」と思うと達成感があります。

この「家の中がキレイになってスッキリして幸せ♪」というスッキリ感や達成感が「報酬」になります。

そして、今後も家の中をキレイでスッキリした状態にキープしたいという欲求が生まれると、ホコリとり&掃除機がけが習慣になっていくというわけです。

「百ます計算」で有名な教育者の隂山(かげやま)英男さんの言葉を借りれば、家事などのやるべきことを習慣にしていけば「努力の無意識化」を実現できるのです。

新しい習慣をつくる際の注意点

複雑な行動であればあるほど習慣になるまで時間がかかる

家事のような複雑な行動は、同じことを何度も繰り返したからといって、すぐに習慣になるわけではありません。

習慣になって無意識のうちに身体が動くようになるまでは、自分は少しずつ進歩しているんだと信じて愚直に繰り返していくことが重要です。

その努力が実を結んだときの効果は絶大です。

欲張って多くのことを一気に習慣にしようとしない

人は大きな変化を求めてしまいがちですが、欲張るとハードルが上がってしまい、成功率が下がってしまいます。

自分が習慣にしたいことを厳選して計画を立て、優先順位の高いものから一つずつ着実に習慣にしていく方が、結局は近道になります。

習慣はデリケートで壊れやすい

習慣が頼っている「きっかけ」がほんの少しでも変わってしまうと壊れてしまうほど、習慣はデリケートです。

先ほどの例の「ホコリとり&掃除機がけ」なら、いつもはホコリとりモップを取りに行ってから掃除を始めていたのに、先に窓を開けてしまうとリズムが狂ってしまい、習慣になっていたはずの行動がスムーズに進まなくなってしまうことがあるのです。

「きっかけ」は毎回愚直に同じ動作にするのがポイントです。

これからどうするか

計画を立てて時間割を作り、家事を分散して毎日少しずつ片付けるようにしたら、以前のように気合を入れて家事をする必要がなくなり、家事のために費やしていた決断力などの気力や労力を他のことに振り向けられるようになりました。

おかげで、フリータイムは自分が本当にやりたいことをしたり、新しいことにチャレンジしたりするための時間にできています。

結局は同じことを繰り返す「規則正しい生活」を送ることが幸せへの近道でした。

「規則正しい生活」というと一見堅苦しいイメージがありますが、それは「朝9時までに出勤しなければいけない」など他人が作った規則の場合です。

でも自分で決めたルールなら誰かにやらされているわけではないので、身に付いてしまえば、「規則正しい生活」は自律神経を整えて美容・健康に良いだけでなく、実は楽で幸せな自分らしい生き方だったのです。

今後も家事や健康管理などやるべきことは習慣にしてしまってスムーズに片付け、自分が本当にやりたいことに全力投球していきたいと思います。

参考文献
『習慣の力〔新版〕』チャールズ・デュヒッグさん、渡会圭子さん訳(2019年 早川書房さん)
『暮し上手の家事ノート シンプルな暮しを楽しむ365日』町田貞子さん(1995年 三笠書房さん)
『日本の復興者たち』童門冬二さん(2006年 講談社さん)