非効率なノート作りと問題演習
かつての私は、試験勉強といえば、ノート作りと問題演習。テキストや参考書などを読んで内容をノートにまとめ、問題集を解く。この繰り返しでした。
この勉強法は、学校の定期テストなど学習範囲が限られている場合にはうまくいきましたが、学習範囲の広い難関資格試験にはとても太刀打ちできませんでした。
二つの大きな落とし穴にハマってしまったのです。
ノート作りに時間をかけて安心してしまう
まず一つ目の落とし穴は、私は非常に神経質でキレイにノートを作らないと気が済まないタイプのため、ノート作りに異常に時間をかけてしまったことでした。
難関資格試験は、学習範囲が広すぎて一通りテキストを読むだけでも時間がかかるというのに。
でも、そんなに手間暇かけて作ったわりにはノートを読み返すことはほとんどなく…
ノートを作っていると頭の中が整理されて勉強している気になり、ノートを作っただけで安心してしまうのです。理解は深まりましたが、そこに時間と労力をかけ過ぎました(汗)
苦手な問題を集中的に解く時間を作らない⁉
二つ目の落とし穴は、自分の得意な問題も苦手な問題も同じ時間配分で解いてしまい、苦手な問題を克服するための十分な時間が確保できなかったことでした。
問題演習をするとき、もちろん1回目は全問解きますが、私は2回目以降も毎回全問解いていました。いったん覚えたことを忘れてしまわないように、定期的にすべての問題を解くようにしていたのです。
そして学習が進んでいくと、復習しなければならない問題がどんどん増えていきます。
それでも毎回全問解こうとすると、苦手な問題だけを集中的に解く時間が確保できなくなり、得意な問題も苦手な問題も同じペース配分で取り組むことになってしまったのです。
それなら、ある程度のところで区切りをつけて、もうできる問題はやらなければいいだけのことです。でも試験勉強をしていると、失敗するかもしれないという不安が常に襲ってきます。
そんなとき、自分ができる問題を解くと安心するのです。すでにできている問題を解くことは現状確認でしかないのに。自分ができる問題を解くことはスランプ脱出には有効ですが、ほどほどにすべきでした。
ノート作りも問題演習も弱点克服のためにやるべき
では、私はどうすればよかったのでしょうか。
できない自分を受け入れ、自分の弱点をつぶしていくことに専念すべきでした。
私は勉強しているつもりでしたが、自分の弱点を正面から見ていなかったのです。いま思えば、自分の本当の実力を知るのが怖くて逃げていたのかもしれません。
ノートを作るなら、理解を深めるために全ての内容をまとめるのではなく、ある程度学習が進んでから、弱点補強のために自分が苦手なものや忘れがちなものだけをピックアップしてまとめるべきでした。理解を深めたいなら、テキストを繰り返し読むだけで充分です。
問題演習も、自分ができない問題だけを完璧にできるようになるまで徹底的に解き続けるべきでした。たとえ、それがどんなにつらくても…
本当に能力がつく勉強は、つらさも高いー人生最大の嘘
東大と司法試験に一発合格した柴田孝之さんの著書『司法試験超人気講師が教える 試験勉強の技術』には、以下のように書かれています。
試験勉強は、試験で要求されるレベルと、自分の持っている能力との間のギャップを埋める作業に過ぎない…これだけを純粋にして、はじめて試験勉強だけをしているといえるのです。
しかし、もう勉強しなくてよいことを勉強している人が多いのに驚きます。例えば、問題集は繰り返し解いた方が良いとアドバイスされたからといって、簡単に解ける問題まで繰り返し解く必要はありません。得意な科目より苦手な科目を勉強すべきです。
人が既にできているものを勉強してしまう理由はあります。もう分かるものを勉強するのでも、自分はしている気になれるからです。しかも、分かるものを復習するのは簡単ですから、苦痛も少ないのです。しかし、これは試験勉強をしているのではないのです。…本当に能力がつく勉強は、つらさも高いのです。
この「もう勉強しなくてよいことを勉強している人」って、まさに私のことですね。耳が痛い。
人生最大の嘘
アドラー心理学では、過去や未来ばかり見て現実から目を背(そむ)け、今を真剣に丁寧(ていねい)に生きないことを「人生最大の嘘」といいます。
私の場合、試験に落ちてしまった時のことを思い出しては次の試験でも失敗するかも…とありもしない未来を見て、不安で勉強に集中できなくなってしまうことがありました。
そんなときは自分を落ち着かせようと、もうできる問題を解いて勉強している気になっていました。本当は弱点の克服に力を入れるべきだと分かっていたのに。
自分が立ち向かうべき課題から逃げることは、自分に嘘をつく生き方です。
次の試験の結果がどうなるかなんて分かりません。本当に合格したいと思っているなら、過去や未来なんて見ずに「いま、ここ」にスポットライトを当て、弱点克服に真剣かつ丁寧に取り組んでいくべきなのです。
経験年数と技量の相関は弱い。量より質が重要
私は7年間もそんな勉強を続け、あえなく撃沈。
難関試験は、長期間勉強すれば受かるわけではなく、勉強の量より質のほうがはるかに重要だということを、身をもって知りました。
経験年数が増えれば技量も上がるように思えますが、実は、ある研究によると、経験年数と技量の相関は弱いことがわかっています。
ジャーナリストのジョシュア・フォアさんの著書『ごく平凡な記憶力の私が1年で全米記憶力チャンピオンになれた理由』には、以下のように書かれています。
何かを上達させるためには、練習の量よりも質のほうがはるかに重要です。実のところ、チェスからヴァイオリン、バスケットボールまで、徹底的に研究されたいずれの分野でも、経験年数と技量の相関は弱いことがわかっている。
…意識して自分に課題を与え、自分のパフォーマンスを監視―見直し、対処し、再考し、再調整を行う―しない限り、目に見えるほどの上達は望めない。
ただ決まった練習をするだけでは十分とは言えないのだ。上達するには、自分の失敗に注目すること、そして間違いから学ぶことが必要だ。
例えば、アマチュアの演奏家は曲の練習に時間を割くのに対し、プロは反復練習や特定の難しいパートの練習に時間を割く傾向が強いそうです。まあ、これは試験勉強の話ではないのですが。
何かを本気で上達させたいと思ったら、たとえ長い間続けたとしても、ただ練習や勉強をするだけでは不十分で、どんなにつらくても、自分の弱点と向き合い、それを克服しようと努力していくことが重要なのです。
ある程度できるようになると満足してしまいがちですが、本当の勉強はある程度できるようになった「その後」から始まるのです!
これからどうするか
それからは、ずっと逃げてきた英語の発音練習に励んだり、面倒くさがって見なかった英語ドラマの鑑賞をしたりして、苦手な英会話の勉強をすることにしました。
英会話の勉強は、難関資格試験の勉強とは違い趣味なので、気楽なものではありますが(笑)
次回の記事では、私の合理的な(?)英語勉強法について書いてみたいと思います。
『司法試験超人気講師が教える 試験勉強の技術』柴田孝之さん(2001年 ダイヤモンド社さん)
『ごく平凡な記憶力の私が1年で全米記憶力チャンピオンになれた理由』ジョシュア・フォアさん、梶浦真美さん訳(2011年 エクスナレッジさん)
『愛に生きる』鈴木鎮一さん(1966年 講談社さん)