新しい幸せのかたち。キャンピングカーという動くマイホーム

キャンピングカー

ここ数年、日本ではコロナ禍で密を避けながらアウトドア・レジャーを楽しんだりテレワーク(リモートワーク)をしたりできるキャンピングカーの人気が高まっています。

日本RV協会さんの「キャンピングカー白書2021」によると、キャンピングカー国内総保有台数は2020年に12万7000台を突破したそうです。

それでも日本全体の乗用車保有台数の1%にも満たないのですが、その希少価値の高さがキャンピングカーをマイホーム代わりに買う重要なポイントになってきます。

この記事では、キャンピングカーという「可動産」を資産の一つに加えて、さまざまなリスクを回避しつつ、時間や場所に縛られずに自由に生きる「新しい幸せのかたち」について考えてみたいと思います。

マイホームを買って家を固定するリスク

持ち家は、自分のものという安心感があり、自分の思い通りに設計してもらえたり、自由にリノベーションできたりして、自分の理想通りの家にできるのは魅力的です。

でもマイホームを買って家を特定の場所に固定してしまうと、安心や自由と引き換えに、いろいろなリスクもあることを意識しなければなりません。

 家を特定の場所に固定するリスク
【家に住めなくなるリスク】

・遠方への転勤で家に住めなくなってしまう

・日本では災害で自宅が被災してマイホームを失う可能性もある
例えば、政府の地震調査委員会の発表(2014年)によると、今後30年以内に首都直下地震が70%の確率で起こると言われています。南海トラフ地震もいつ起こってもおかしくないと言われていますし、地震に限らず台風や集中豪雨などで被災する可能性もあります。

【引っ越すのが難しくなるリスク】

・築30年以上の古い木造戸建てや立地条件があまり良くない物件などは売るのが難しく、住み替えが難しい

・ストーカーや犯罪組織などに住所を知られてしまっても簡単に引っ越せない

・騒音問題など近隣トラブルに遭ってしまって引っ越したくても住み替えが難しい

・近所の商業施設の撤退や商店街の衰退、病院の移転など、環境の変化に対応するのが困難

・まわりに空き家が増えてきて治安が悪化してくると、ますます引っ越すのが難しくなる

【家族や自分の将来が制約されるリスク】

・近所で子どもを預ってくれる保育園を見つけるのが難しいと、仕事への復帰に影響がある

・子どもの進学先が制約されてしまう

・自宅が実家から遠い場合、親の介護が必要になったときに通うのが大変

・売るのも貸すのも難しい物件は、空き家になってしまうと、相続した子どもにとっては、持っているだけで固定資産税などの維持費がかかる「負」動産になってしまう

 
私はこのようなリスクが怖いので、マイホームを買うことができませんでした。
そこで、今のところ賃貸暮らしを続けていますが、家を固定するリスクを回避しつつ、マイホームのように自分のものという安心感とリノベーションできる自由があるのに、動かすことができる「可動産」であるキャンピングカーを買うことにしました。
「夢のマイホーム?大きな家に住むと幸せになれる?幸せな家の条件とその真実」という記事にも書きましたが、キャンピングカーはいわば「動く狭小住宅」です。
キャンピングカーを「動くマイホーム」のようにすれば、自由にカスタムして自分たちにとって快適で居心地のいい空間にできますし、レジャーや趣味を楽しんだり、時にはテレワークしたりしながら、時間や場所に縛られず自由に今を楽しむこともできます。
 

キャンピングカーは新車で買うか中古で買うか

ところで、キャンピングカーは高い買い物なので、中古で安く買うという選択肢もあります。

実際、私も当初は中古のキャンピングカーを探していました。

でも自分たちのニーズに合った中古のキャンピングカーを見つけるのは、予想外に至難の(わざ)でした。

そして、4~5年もの間キャンピングカーショーや中古車販売店などに足を運び続けた挙句、思い切って新車でキャンピングカーを買うことにしました。

安定収入がありローンを組みやすい現役時代のメリットを生かして新車で買った方が、自分たちのニーズに合わせてカスタマイズしてもらえるので、キャンピングカーライフを快適に楽しく過ごすことができるからです。

 
筆歌
キャンピングカーは高いというイメージがありますが、軽自動車をベースにした「軽キャンパー」もあり、新車でも200万円前後から購入できます。コンパクトで普段使いもできるのに設備が充実しているので、人気の車種は、新車で買うと納車まで2年待ちというものもあり中古で買おうとしてもほとんど出回っていないようです。
 

いざという時のキャンピングカー

もう一つ新車で買った重要な理由があります。

それは「キャンピングカーはリセールバリューが高い」からです。

普通の乗用車なら10年で10万キロも走ったら、ほとんど値がつかないのが現状です。

でもキャンピングカーなら、安く中古でキャンピングカーを買いたいというニーズに対し、日本国内で出回っているキャンピングカーの総数は乗用車全体のわずか1%にも満たないので、高年式車や走行距離の多い中古車でも高く買い取ってもらえる可能性が高いのです。

つまり、キャンピングカーにはいつでも現金化できる「可動産」として有望な資産になりうる一面もあるのです。

いざという時には、愛車のキャンピングカーがリスクヘッジになって自分を守ってくれます

ここが「不動産」と違うところです。

不動産は動かせないので、よっぽど立地条件が良い物件でなければ、「すぐに、しかも、高値で」家を売却することは難しいのではないかと思います。

税理士の亀田潤一郎さんの著書『稼ぐ人はなぜ、長財布を使うのか?』には、借金返済のため希少価値の高いCDや蔵書を高値で売却した時のことが、次のように書かれています。

この時、私は身の回りのモノが現金になりうることを実感したのです。

以来、リスクヘッジのためにも、何かを買う時には後々になっても価値があまり下がらないものを買うようになりました。

…衝動買いせずに、じっくり質を見極めるようになったのです。

結果、長く大事にし続けられる、一生手元に置いておいてもよいと思えるモノばかりを身の回りに備えるようになりました。

「いざという時」など、来ないほうがよいに決まっています。しかし本当にいざという時には、彼らが力になってくれる。

私の身の回りの愛しいモノたちは、同時に私を支えてくれる頼もしい存在でもあるのです。

 
筆歌
試しに我が家の愛車のキャンピングカーを査定してもらったところ、5年半で5万キロ近く走ったにもかかわらず、新車購入時にかかった費用の7割以上の値がつきました。普通の車では考えられませんよね。
 

キャンピングカーなら分散投資になりリスクを小さくできる

都心のマンションの中には値上がりしている物件もありますが、一般的には、日本では、不動産価格は上がり続けるという「不動産神話」がなくなってしまった上に、これから人口がどんどん減っていって空き家がさらに増えることを考えると、マイホームに大金をつぎ込むことはリスクを伴います。

一方で、キャンピングカーは車にしては高価ですが、家に比べれば「動く狭小住宅」としてマイホームのように使えるわりに大きな買い物ではありません

しかも、先ほど書いたように、キャンピングカーはリセールバリューが高いので、資産としての一面もあります

その時々の自分のライフスタイルや家計状況に合わせた賃貸住宅に住みつつ、キャンピングカーをマイホーム代わりに買い、十分な生活防衛資金(半年から1年分くらいの生活費)を確保した上で、他に現金・預金、株式や債券、外貨などに投資するといったリスク分散もありうるのではないかと思います。

賃貸暮らし&キャンピングカーは最強の災害対策にもなる

地震や台風・集中豪雨などが多い災害大国ニッポンでは、いつ自宅が被災するかわかりません。

そこで、賃貸暮らしをすれば災害で自宅が被災しても引っ越せるので、自宅に住めなくなるリスクや、住宅ローンに加えて修繕費などがかかるリスクなどを回避できます。

ただ賃貸暮らしなら引っ越せるとはいえ、すぐに引っ越せるわけではありません。

次に住む家が見つかるまでは、避難所に身を寄せたり、家族や親戚、友人・知人などを頼ったり、ホテル暮らしをしたりしなければならないからです。

特に、小さなお子さんやペットのいるご家庭は何かと大変なのではないかと思います。

でもキャンピングカーがあれば、次に住む家が見つかるまでキャンピングカーを自宅代わりにすることができます。

キャンピングカーは災害時のシェルターにもなるわけです。

キャンピングカーなら電気が使えるので、スマホなどの携帯電話を充電できますし、夜は明かりをつけて、真っ暗な中でローソクの火や懐中電灯などで過ごさなくて済みます。

冷蔵庫も使えるので生鮮食品をダメにしなくて済みますし、水とガスも使えるので、お湯を沸かしたり温かい料理を作ったりすることもできます。

車なので、ふだんから十分な量のガソリンが残っているように気をつけていれば、食材や生活雑貨などを調達できる地域に移動したり、入浴施設やコインランドリーなどに行ったりすることも可能です。

FFヒーターという車のエンジンを切っても使える暖房を装備すれば冬も暖かく過ごせますし、エアコンを設置しておけば夏の暑さもしのげます。

さらに電子レンジやトイレ・シャワーも装備し、Wi-Fi 環境を整えておけば最強です。

キャンピングカーはいざという時にスムーズに現金化できるだけでなく、災害時のシェルターにもなってくれる頼もしい相棒なのです。

 
筆歌
実は、私が本気でキャンピングカーを買おうと決意したきっかけは、2011年の東日本大震災でした。震災で家に住めなくなり、避難所に身を寄せて大変な思いをされている方々の姿を見て、他人事とは思えなかったのです。それまでは定年退職後に中古で安いキャンピングカーを買って第二の人生を楽しもうと思っていましたが、災害時のシェルターにもなるキャンピングカーを買い、今を楽しみながら災害対策していくことにしました。
 

キャンピングカーのデメリット

ここまで長々とキャンピングカーのメリットについて書いてきましたが、もちろんデメリットもあります。

車の購入費用の問題

キャンピングカーは新車で買うと一般的に値段が高く、200万円前後で買えるものもありますが、500万円前後から1,500万円以上するものもあります。

最近は若い世代にキャンピングカーを買ってもらおうと、最長240回払い(20年!)でローンを組めるようになったようですが、オートローンは住宅ローンほど低金利ではありませんし、住宅ローン減税のような優遇措置も受けられません。

借入金額が多くて支払期間が長いと、マイホームのつもりで買っても、この歴史的超低金利の時代に割高な利息を払わなければならなくなってしまうのです。

新車で買う場合には、頭金をなるべく多めにして借入金額を減らし、借入期間が長くならないようにすることが重要です。

維持費の問題

普通の車は新車で買うと最初の3年間は車検がありませんが、キャンピングカーの場合は新車で買っても最初から2年ごとに車検を受けなければなりません。

3年目から車検代がかかってしまうわけです。

しかもキャンピングカーは就寝設備や水道・炊事設備などが装備されているため、点検箇所が多くて点検費用が割高になる傾向がありますし、装備が複雑なので壊れやすく、修理代もかかりがちです。

また、車種にもよりますが、キャンピングカーは一般的に車両価格が高い場合は、自動車保険料も高くなってしまう傾向があります。

ガソリン代も高くなりがちです。キャンピングカーだと車中泊できるので遠方への旅行がしやすいため、走行距離が多くなりがちだからです。

特に今はガソリン代が急騰しているので、家計への影響はかなり大きいです。

今はコロナ禍で遠出できていませんが…

運転時の問題

キャンピングカーは一般的に車体が大きいので、車を車庫などから出し入れするときは、周りの車や建物などにぶつけないよう、普通の車よりもかなり慎重に運転しなければなりません

駐車場に車を停める時は、他の車に誤ってぶつけられないよう、なるべく他の車の邪魔にならない端の方に停めるよう心掛けることも重要です。

車高が3メートルくらいあるキャンピングカーの場合、高さにも注意しなければなりません

狭いトンネルなどがあるルートを避けたり、低い位置にある(ひさし)や道路に張り出している木の枝などにぶつからないように細心の注意を払ったりする必要があります。

車幅が広いキャンピングカーの場合は、なるべく細い道を避けるのが無難です。

交通事故の問題

キャンピングカーは常に重い荷物を載せたままなので、タイヤに大きな負担がかかります。

荷物を載せすぎたり、スピードを出しすぎたりすると、最悪の場合タイヤがバーストして大変な事故を起こしてしまうので、使わないものはなるべく積みっぱなしにせず、スピードを出し過ぎないように気をつけなければなりません。

荷物を重さがなるべく左右均等になるように積んだり、タイヤの空気圧が適正かどうかこまめにチェックしたりすることも重要です。

また、車体が大きく車側面の表面積が広いタイプのキャンピングカーは横風に弱く、強風にあおられて転倒してしまうこともあります。

強風のときは、なるべく運転を控え、運転する場合はスピードを落として慎重にハンドル操作をする必要があります。

さらには、自分の注意だけでは避けられない「もらい事故」に遭ってしまうリスクもあります。

キャンピングカーは、とてもデリケートで壊れやすいです。

横転して壊れてしまったら、有望な資産どころか、資産価値はゼロになってしまいます。

駐車場の問題

車種にもよりますが、キャンピングカーは一般的に車体が縦にも横にも大きいので、車を停められる場所が限られてしまいます

まず自宅から2キロ以内の駐車場を確保できるかという問題があります。

全長5メートル以内でもキャンピングカーは車幅が広くて大きいので、都市圏では駐車場を借りようとしても断られてしまうことが多く、全長5メートル以上だと駐車場を見つけるのはさらに難しくなってしまいます。

街乗りでも使いたい場合、車高が高いキャンピングカーの場合は、高さ制限のある立体駐車場はもちろんのこと、青空駐車場でも高さ制限や重量制限のある場合は、重さが3トン以上あるキャンピングカーは停められないので、行けるお店や施設などが限られてしまいます

街乗りでも不自由なく使いたい場合は、軽キャンパーやハイエースなどをベースにしたバンコンタイプのキャンピングカーにするといいと思います。

 
筆歌
自宅から2キロ以上離れていても特例として8ナンバーのキャンピングカーなどを保管してくれる「モータープール」という駐車場を借りてセカンドカーで家と行き来すれば、都市圏でも大型キャンピングカーを買うことはできます。でも、キャンピングカーのために車を2台持ちするのは、よっぽどお金に余裕がないと厳しいと思います。
 

キャンピングカーを「動くマイホーム」に⁉

ふだんから断捨離(だんしゃり)に励んで荷物を必要最小限にし、キャンピングカー1台で暮らせるよう工夫していれば、災害時のシェルターどころか、「動くマイホーム」にすることも可能です。

実際、家を断捨離して定住せずにキャンピングカーだけで旅しながら暮らしているYoutuberの方々もいらっしゃいます。

いろいろと大変なこともあるようですが、みなさん毎日が充実していて、とても幸せそうです。

でも仕事やお金の問題などがあり、キャンピングカーを完全にマイホームにしてしまうのは難しいので、とりあえずはキャンピングカーを「動く別荘」として活用して休日バンライフを楽しんでいきたいと思います。

参考文献
『稼ぐ人はなぜ、長財布を使うのか?』亀田潤一郎さん(2010年 サンマーク出版さん)
『老いる家 崩れる街』野沢千絵さん(2015年 講談社さん)
『こんな街に「家」を買ってはいけない』牧野知弘さん(2016年 KADOKAWAさん)
『「とりあえず5年」の生き方』諸富祥彦さん(2010年 実務教育出版さん)
『日本人というリスク』橘(たちばな) 玲(あきら)さん(2013年 講談社さん)
『お金で損しないシンプルな真実』山崎 元さん(2018年 朝日新聞出版さん)
『「なんとかなる」ではどうにもならない定年後のお金の教科書』山中伸枝さん(2016年 クロスメディア・パブリッシングさん)
『人生を10倍豊かにする至福のキャンピングカー入門』岩田一成さん(2016年 グラフィスさん)
『被災ママに学ぶちいさな防災のアイディア40 東日本大震災を被災したママ・イラストレーターが3・11から続けている「1日1防災」』アベナオミさん(2017年 学研さん)
『「家を買おうかな」と思ったときにまず読む本』竹下さくらさん(2009年 日本経済新聞出版社さん)
『サラリーマンは自宅を買うな』石川貴康さん(2010年 東洋経済新報社さん)
『老後の住まいの探し方―週刊東洋経済eビジネス新書No.229』週刊東洋経済編集部さん(2017年 東洋経済新報社さん)
『持ち家が危ない―週刊東洋経済eビジネス新書No. 208』週刊東洋経済編集部さん(2017年 東洋経済新報社さん)
『マンション 絶望未来―週刊東洋経済eビジネス新書No.290』週刊東洋経済編集部さん(2019年 東洋経済新報社さん)
『新築マンションは9割が欠陥』船津欣弘さん(2016年 幻冬舎さん)
『40代を後悔しない50のリスト 時間編 1万人の失敗談からわかった人生の法則』大塚 寿さん(201年6 ダイヤモンド社さん)