夢のマイホーム?大きな家を買うと幸せになれる?幸せな家の条件とその真実

公園

世間一般では「夢のマイホーム」という言葉をよく耳にしますし、部屋数の多い立派な豪邸に住んでいる芸能人の幸せそうな姿をテレビで目にすることもよくあります。

でも大きな家を買うと幸せになれるのでしょうか。

とある住宅関連企業が行った「幸せな家の条件」に関する調査結果を参考にしながら「幸せと家の関係」について考えてみたいと思います。

破られた夢のマイホーム神話⁉

家を買うことは「夢のマイホームを手に入れる」とか「憧れのマイホーム購入」等とよく言われ、多くの人が何となく賃貸住宅よりも持ち家に住んだ方が幸せになれるイメージを持っているのではないかと思います。

実際、老後のことを考えると持ち家があった方が安心ですし、持ち家なら自分好みのデザインに設計してもらえたり自由にリノベーションできたりして、自分の理想通りの家にできるので、マイホームはとても魅力的です。

でも、ヨーロッパのとある住宅関連企業が行った調査によると、持ち家の人は賃貸住宅に住んでいる人よりもほんの少し幸福度が高いだけで、「幸せな家の物理的条件ランキング」でも「持ち家であること」は意外にも4位でした。

同ランキングの2位は「将来のライフステージの変化(家族の増減など)に適応できること」で、ライフステージの変化に柔軟に適応できることが重要と答えた人は、4位の持ち家と答えた人の7倍もいたそうです。

つまり賃貸住宅でも十分幸せになれる可能性はあるというわけです。

結婚して子どもができたり、子どもが進学したり巣立っていったりする等、その時の自分のライフステージに合わせて、住む場所も家の広さも変えられるという意味では、持ち家よりも賃貸住宅の方が、柔軟性があるかもしれません。

ただし、住みたい場所で自分のニーズに合った賃貸物件を借りられれば、の話ですが(汗)

 
筆歌
ちなみに、幸せな家の物理的条件ランキングの1位は「家の状態(特にトイレ・浴室などの水回り)が良いこと」でした。そりゃあ、そうですよね。
 

マイホームは大きなリスクと隣り合わせ

しかも、地震や台風・集中豪雨などが多い災害大国ニッポンでは、いつ自宅が被災するかわからず、もし現金・預金や株式・債券などの貯蓄がほとんどなく、自宅が唯一の資産である場合には大変なことになってしまいます。

家には住めないのに、住宅ローンだけが残ってしまうという…

作家で投資や経済に詳しい (たちばな)(あきら)さんの著書『日本人のリスク』によれば、かつては「終身雇用のサラリーマンが住宅ローンを組んで家を買うこと」が最強の資産運用でした。

しかし不動産価格は上がり続けるという日本の「不動産神話」は1990年に終わっており、住宅ローンを組んで家を買うことは既に有利な資産運用ではなくなっているそうです。

他方で、日本の賃貸住宅の借り手は借地借家法で手厚く保護されていて、家賃を払い続けている限り、家賃を値上げされることも追い出されることもめったになく、事実上家を持っているのと同じだそうです。

このような状況も考えると、今の日本では、マイホームに大金をつぎ込むよりも、割安な家賃の賃貸住宅に住み、敷金・礼金や更新料などがかかるとはいえ、十分な生活防衛資金(半年から1年分くらいの生活費)を確保したうえで、家以外の現金・預金、株式や債券、外貨などに分散投資した方がリスクの小さい有利な資産運用になりそうです。

老後に自分が住みたい地域で自分のライフスタイルに合った賃貸住宅を借りられなかったときのことを考えて、安い中古物件を買えるくらいのお金を貯めておくことも重要です。

家が大きければ大きいほど幸せになれる?

成功した芸能人がテレビで自慢の大豪邸を披露するのを見て「自分もあんな家に住めたら幸せだろうなあ」と思うことがあるかもしれません。

家が大きければ大きいほど幸せになれそうな気がしますが、実は驚くべきことに、先ほどの住宅関連企業が行った調査によると、客観的にみると大きい家なのに住んでいる当人は窮屈(きゅうくつ)に感じることが多かったり、逆に小さい家なのに住んでいる人はゆとりがあると感じたりすることもあるそうです。

部屋数に関しても、先ほどご紹介した「幸せな家の物理的条件ランキング」によると、「部屋数が多いこと」は6位で、3位の「広さにゆとりが感じられること」と答えた人の方が6位の3倍いたそうです。

つまり、実際の家の大きさや部屋数の多さよりも「その人にとってゆとりが感じられるか」が重要で、自分の使い方に合った間取りとスペースを確保して自分らしく暮らせていると幸福度が増すようです。

 
筆歌

確かに、自分の理想通りの間取りになっていて、住んでいる人にとって十分な広さがあると感じられれば、いわゆる「狭小住宅」に住んでいても幸せそうですよね。幸せになるためには、見た目は小さくて狭そうでも、自分にとってゆとりがあって心地よいと思えることが重要なんですね。

 
幸せな家の物理的条件ランキング
1位 家の状態が良いこと(特にトイレ・浴室などの水回り)

2位 将来のライフステージの変化(家族の増減など)に適応できること

3位 ゆとりが感じられる広さであること

4位 持ち家であること(家の所有権がある)

5位 住民にとって十分な部屋数があること

6位 部屋数が多いこと

 

幸せそうに見られたい人は幸せになれない⁉

自分の理想を叶える「狭小住宅」に住んでいる人が幸せに暮らしている一方で、むしろ大きな家や部屋数の多い高級マンションに住んでいる人の方が幸福度が下がってしまっていることもあります。

自慢できる家に住んで幸せそうに見られたいからと、本当は住宅ローンや家賃の支払いがキツイのに、見栄を張って大きな家を買ってしまったり、身の丈に合わない高級賃貸マンションを借りてしまったりする場合です。

確かに、どんな家に住んでいるかを通じて自分を表現することは、人の幸せにとって非常に重要です。

実際、先の住宅関連企業が行った調査によると、「幸せな家の心理的条件ランキング」では、家を通じて自分を表現できているという「アイデンティティー(独自性)」が3位にランクインしています。

でも「アイデンティティー」が立派な家に住んで幸せそうに見られたいという承認欲求にすり替わってしまうと、自分に合った家に住むことよりも、世間一般で理想とされている高級物件に自分を合わせようとしてしまい、自分らしく自由に生きられなくなってしまいます。

住宅ローンや家賃の支払が多くて、他に自分が好きなことや、やりたいことにあまりお金を使えなくなったりしてしまうわけです。

理想の家と承認欲求
「幸せのお手本?本当の幸せって何だろう…」という記事にも書きましたが、他の人の注目を集めて「特別な存在」になって他の人に自分の価値を認めてもらおうとすると、他の人の理想に合わせて生きることになり、自分らしく自由に生きられなくなってしまいます。

たとえ立派な家に住んで他の人に認めてもらえても、いつも住宅ローンや家賃の支払のことで頭がいっぱいだったら、人生は苦しいものになってしまうのです。

特に持ち家の人は、ローンが支払えなくなったら大金を注ぎ込んだ家を失ってしまうという大きな恐怖感を抱えているのでなおさらです。

一人ひとり違うアイデンティティーを持っており、誰もが価値ある存在なので、誰かに自分の価値を認めてもらう必要はありません。

自分の価値は自分で決めていいのです。

 

幸せな家の最強の条件

ところで、先ほどご紹介した「幸せな家の心理的条件ランキング」の1位は「プライド」で、自分の家を誇りに思えることです。

調査対象者の実に44%が幸せな家の心理的条件を「プライド」と答えており、自分の家を誇りに思えるかどうかが、幸せに暮らせるかを左右する重要なカギのようです。

この住宅関連企業の調査の結果、自分の家をより良いものにしていくことに興味を持っていればいるほど、なおかつ、実際に自分のライフスタイルに合うよう家具などを揃えたりリノベーションしたりすればするほど、愛着が増して自分の家を誇りに思えることが明らかになりました。

ちなみに、改良すると幸福度が一番増すのはキッチンで、トイレや浴室などの水回りがこれに続きます。

幸福学の研究者である前野隆司さんの著書『幸せのメカニズム 実践・幸福学入門』によると、幸せになれる一番強力な方法は「創造」で、美しいものを創ってから鑑賞すると、その効果は絶大だそうです。

美しいものを創ってから鑑賞すると、感動の大きさが違います。だから、「ただ見るだけでなくて、創ってから見よ」だと思うのです。たとえば自分で絵を描いてから見ると、微妙なタッチの難しさもわかる。構図や色の配置の絶妙さも。その絵を描くことがどれくらい難しいかも実感としてわかる。だから、百倍感動できる。そういうことなのだと思います。

やはり、リノベーションしたりお気に入りの家具を(そろ)えたりして、自分の家の周りや家の中に自分にとって美しいと思える空間を創り、いつもそれを見ながら生活していると幸福度が増すようです。

 
筆歌
自由に自分の家を自分好みに変えていけるという意味では、自由にリノベーションできない賃貸住宅よりも持ち家の方に軍配が上がりますね。
 
幸せな家の心理的条件ランキング
1位 プライド(誇り)

2位 心地よさ、快適さ(自分にとっての聖域がある)

3位 アイデンティティー(独自性、家を通じて自分を表現)

4位 安心感(治安の問題だけでなく、水漏れなど衛生に問題がなく、安心して住めること)

5位 コントロール性(物理的にも財政的にも管理できていると思えること)

 

マイホームと賃貸住宅のいいとこどり⁉

自分のものという安心感があり、自由にリノベーションできるという点ではマイホームは魅力的です。

でも地震や台風などで自宅が被災するリスクや、将来何が起こるかわからず、何十年も住宅ローンを払い続けられる保証がないことを考えると、その時の状況に応じて引っ越せる賃貸住宅も魅力的です。

そこで、賃貸住宅に住んで災害などで家を失うリスクは回避しつつ、マイホームのように自分のものという安心感がありつつ、自由にリノベーションできる「動く家」(キャンピングカー)を買うことにしました。

転勤族なので家を買うのが難しいというのもあるのですが(汗)

キャンピングカーはいわば「動く狭小住宅」です。

時間や場所に縛られずにレジャーを楽しんだりテレワークできたりするだけでなく、災害時にはシェルターにもなるキャンピングカー。

今後も車内が自分たちにとって居心地の良い空間になるようにいろいろと工夫して、「新しい幸せのかたち」を追求していきたいと思います。

参考文献
『日本人というリスク』橘 玲さん(2013年 講談社さん)
『幸せのメカニズム 実践・幸福学入門』前野隆司さん(2013年 講談社さん)
『お金で損しないシンプルな真実』山崎 元さん(2018年 朝日新聞出版さん)
『「なんとかなる」ではどうにもならない定年後のお金の教科書』山中伸枝さん(2016年 クロスメディア・パブリッシングさん)
『「家を買おうかな」と思ったときにまず読む本』竹下さくらさん(2009年 日本経済新聞出版社さん)
『老いる家 崩れる街』野沢千絵さん(2015年 講談社さん)
『こんな街に「家」を買ってはいけない』牧野知弘さん(2016年 KADOKAWAさん)
『サラリーマンは自宅を買うな』石川貴康さん(2010年 東洋経済新報社さん)
『老後の住まいの探し方―週刊東洋経済eビジネス新書No.229』週刊東洋経済編集部さん(2017年 東洋経済新報社さん)
『持ち家が危ない―週刊東洋経済eビジネス新書No. 208』週刊東洋経済編集部さん(2017年 東洋経済新報社さん)
『マンション 絶望未来―週刊東洋経済eビジネス新書No.290』週刊東洋経済編集部さん(2019年 東洋経済新報社さん)
『新築マンションは9割が欠陥』船津欣弘さん(2016年 幻冬舎さん)
『40代を後悔しない50のリスト 時間編 1万人の失敗談からわかった人生の法則』大塚 寿さん(2016年 ダイヤモンド社さん)