幸せのお手本?本当の幸せって何だろう…

考え中

早くも十代の時点で「幸せのお手本」から脱落

良い大学を出て良い会社に就職し出世する。そして結婚して子どもを育て、老後資金を貯めて老後は孫と遊ぶ。
十代の頃の私は、これが「幸せのお手本」だと思っていました。

そして、この「幸せのお手本」どおりに生きれば世間に認められて幸せになれると信じていました。
だからこそ、人生で一番楽しいはずの青春時代を勉強に費やし、我慢に我慢を重ねて努力しました。

でも残念ながら希望の大学には入れず、第一希望の会社にも就職できませんでした。
人生のずいぶんと早い段階で「幸せのお手本」から外れてしまったのです。

こんな私をまわりの人はどう思っているんだろう。
きっと可哀(かわい)そうな人だと思われてるんだろうな。

そんなことを考えるたびに、ますます惨めな気持ちでいっぱいになり、自分が情けなくなりました。

「幸せのお手本」が想定していたのは男性⁉

でもその一方で、私は就職活動を機に「幸せのお手本」について疑問を持ち始めていました。

女性にとって、結婚・子育てをすることが本当に幸せなんだろうか。
就職活動中に男女差別を受け、結婚して子どもを産むことが悪いことだと思うようになってしまったのです。

面接官「結婚したら会社辞めるんですよね?」
私「辞めません。結婚しても仕事は続けます。」
面接官「でも子どもができたら辞めないといけませんよね?」
私「・・・」

私が受けた全ての会社というわけではありませんが、複数の企業で面接のたびにこのような会話が交わされ、悲しい思いをしました。
重要な仕事を任せても途中で中断されてしまったら困るという企業側の事情も分かりますが…

私は金融業界で総合職を希望していたのですが、1990年代当時は女性の総合職の採用枠が非常に少なく、女性は一般職で採用され寿(ことぶき)退社するのが普通でした。
金融機関に就職する女性は、総合職の男性のお嫁さん候補だったようです。

総合職でバリバリ働きたい女性は、子どもを産まない方が良いということ?
女性は一般職に()いて寿(ことぶき)退社して子育て・出産した方が良いということ?
ん?「幸せのお手本」って?

そう、私が「幸せのお手本」だと思い込んでいたのは、結婚して子どもができても仕事を辞める必要のない大卒男性を想定したものでした。

女性が結婚・出産を機に寿(ことぶき)退社するのが当たり前だった時代に世間的には理想とされていたもので、そもそも女性が四年制大学を出ることも総合職に()くことも、あまり想定されていなかったのです。

現在は金融機関も含めて、多くの企業で女性の産前産後休業制度が活用され、結婚・出産を経て総合職で活躍されている大卒の女性はたくさんいらっしゃいます。

今となっては、男性を想定した「幸せのお手本」なんて時代錯誤もいいところですが、私はこんなシンプルな事実に二十歳を過ぎた頃にようやく気付きました(汗)。

男女問わず仕事に就ける資格の取得を目指すも…

一生懸命勉強して曲がりなりにも大学まで出たのに、今までの努力は何だったんだろう。
女性にとって結婚して専業主婦になることが本当に幸せなんだろうか。
両親が大学まで行かせてくれたのに…

今までの努力を無駄にしたくない。
そこで、試験に合格すれば男女問わず責任ある仕事に就くことができる資格の取得を目指すことにしました。
無謀な私は、どうせやるなら難しい試験にしようと、超難関資格試験にチャレンジすることにしたのです。

大学卒業後、仕事をしながら夜は学校に通って勉強。就職せず勉強に専念するという選択肢もありましたが、母に借りたお金を返すため、仕事をしながら勉強することにしました。

しかし覚悟はしていたものの、仕事と勉強の両立はとても難しく、ストレスで暴飲暴食に走ったり、一時は自殺まで考えたりするほどに…

母はそんな私を見かねて「残りの借金は帳消しにしてあげる。もうお金は返さなくていいから、仕事は辞めていいのよ」と言ってくれました。

いつも私に無条件の愛情を(そそ)いでくれた母は残念ながら数年前に他界(たかい)してしまいましたが、亡き母にはいくら感謝しても感謝しきれません(涙)。

そんなわけで、その後は試験勉強に専念し、受験開始から3年ほどで合格まであと一歩というところまでは来ました。が、そこからが地獄の日々でした。
勉強しても勉強しても、あと一歩という壁が越えられなかったのです。

他人軸で生きるとプレッシャーで苦しいー普通であることの勇気

受験勉強期間が長くなるにつれ、企業に就職した(まわ)りの友人たちは順調にキャリアアップしていきました。
みんなはバリバリ働いて(かせ)いでるのに、私はいい年をして家に引きこもって勉強してるなんて。

私なんか、この世にいなくてもいいんじゃないか…
他人と自分を比べ、卑屈(ひくつ)になっていきました。

そして、男女問わず平等に仕事に()けると思って勉強を始めたのに、受験勉強が長引くにつれ、いつしか難関試験に合格して一目(いちもく)()かれることで敗者復活したいという気持ちの方が強くなり、他人の目を強く意識するようになっていきました。

すると、自分の意志でやってみようと思って始めた頃は勉強が楽しかったのに、いつのまにか他人が自分をどう思うかという他人軸(たにんじく)で考えるようになってしまい、試験勉強がプレッシャーで苦しいものになってしまったのです。

「幸せのお手本」から離れて、自分のやりたいことをやっていたつもりが、私は根本的な部分で変わっていませんでした。
自分がどう思うかという自分軸(じぶんじく)よりも、他人が自分をどう思うかという他人軸(たにんじく)に大きく傾いて生きていたのです。

ずいぶんと時間がかかりましたが、世間から特別な存在と認められようと他人軸(たにんじく)で生きていると苦しいし、たとえ目標を達成できたとしても上には上がいるので自分の心が本当に満たされることはないと気づきました。

普通であることの勇気


他人の注目を集めて「普通」の人から「特別な存在」になろうと、承認欲求にとらわれて他人に自分の価値を認めてもらおうとしてはいけません(普通であることの勇気)。

なぜなら、他人に認められようと他人の期待を満たすために生きることは、本当の自分を捨てて他人の人生を生きることになり不自由だからです。

また、たとえ他人に認められても、そこから得られる喜びは一時的なものでつかの幸せでしかなく、もっともっと認められたいと他人にますます依存することになり、永遠に心が満たされることはありません。

他人に認めてもらうことは、自分の価値を実感できる明確かつシンプルな分かりやすい方法で、らくな方法のように見えます。でも実は、自分の価値は自分で決めなければ生きるのが苦しいし、幸せになれないのです。

ちなみに、「普通であること」は「無能」という意味ではありません。誰もが同じように世界の一部であって、今を真剣に丁寧に生きていれば、わざわざ自分は特別な存在なんだとアピールする必要はないのです。

自分で自分を不幸にしていた⁉

そして、30歳を目前にして受験を断念。
実は受験勉強中に結婚し、試験勉強をするのは20代までと心に決めていたのです。
苦渋(くじゅう)の決断でしたが、どこかで区切りをつけなければいけないと思い、自分の力不足を認めて試験勉強をやめました。

試験勉強をやめたときも、まわりからどう思われるかすごく気になりました。
きっとまた可哀(かわい)そうな人だと思われるんだろうな…

でも、ありがたいことに、仲の良い友人の一人が「今まで本当によく頑張(がんば)ったと思うよ。
7年間も勉強を続けてきたのに、やめるという決断ができたのはすごいことだよ」と言ってくれたのです。

思えば、夫を始めとして、家族も親戚(しんせき)も友人たちも皆、いつも私を応援してくれていました。
私はかけがえのない仲間に支えられていたのです。

自分を可哀(かわい)そうだと思っていたのは、私自身でした。
私を不幸にしていたのは、いつも他人と自分を比べて今の自分を受け入れず、自分にないものばかりを見ていた私だったのです。

もう自分がコントロールできないことで悩まない

もう他人が自分のことをどう思うかなんて考えるのはやめよう。
他人が自分のことを本当にどう思っているかなんて分からないし、他人がどう思おうと自由で、私にはコントロールできないことなんだから!

そう思った瞬間、自分の心が外から内へ向かっていくのが分かりました。
他人がどう思おうが、私は私。他人がどう思うかなんて気にせずに、自分がやりたいことを模索していこう。

何が自分にとって幸せなのか。それは「幸せのお手本」のような、世間や他の誰かが決めるものではなく、親の()いた安全なレールの上を進むことでもありません。
自分で考え、自分で見つけるものなのです。

これからどうするか

「他人が自分をどう思うか」という他人軸(たにんじく)で生きることの苦しさを身をもって知った私は、本当の幸せを感じるために、今後は自分がどう思うかという自分軸(じぶんじく)を模索していくことにしました。
いま自分が置かれた環境に感謝しつつ…

次回へ続く

参考文献


『嫌われる勇気』岸見一郎さん、古賀史健さん(2013年 ダイヤモンド社さん)
『幸せになる勇気』岸見一郎さん、古賀史健さん(2016年 ダイヤモンド社さん)
『ぼくたちに、もうモノは必要ない。』佐々木典士さん(2015年 ワニブックスさん)
『幸福途上国ニッポン』目崎雅昭さん(2011年 アスペクトさん)
『「幸せ」について知っておきたい5つのこと』NHK「幸福学」白熱教室制作班さん(2014年 中経出版さん)
『自分のための人生』ウエイン・W・ダイアーさん、渡部昇一さん訳(2001年 三笠書房さん)