自己受容ダイエット―まずは太っている自分を受け入れてストレスをなくす

悩む女性

自分が太った原因と向き合う

かつての私はすごく太りやすく、太ったり()せたりを繰り返していました。

高校生の頃まではダイエットとは無縁(むえん)だったのに、大学生になって食べる楽しみを覚えてしまい、ぶくぶく太ってしまったのです。

()せて身軽(みがる)になりたい! 身体(からだ)が重くて何をするにもおっくうになってしまっている自分がすごく(いや)でした。

太って着られなくなってしまった洋服をまた着られるようになりたいし、おしゃれも楽しみたい!

そこで、食事を減らしたり、大好きな甘いものを我慢(がまん)したりしてダイエット。

一時的に体重は減るものの、食事制限をしていた反動でドカ()いして、結局さらに太ってしまいました。

しかも、ダイエットするたびに()せにくくなっていくという悪循環…

()せたいと思ってダイエットを始めたのに、かえって太っちゃうなんて! 一体どうしたらいいんだろう。

そこで一度立ち止まって、自分が太った原因を冷静(れいせい)に考えてみました。自分と向き合ってみたのです。

私を襲ったストレス食い

私が太った最大の原因は、ストレスで甘いものを食べすぎてしまうことでした。

特にチョコレートが大好きで、チョコを食べていると心が落ち着き幸せな気分になれるのです。

もともと甘いものが大好きで、甘いものを一気に大量に食べてしまうのが問題でした。

しかも、甘いものを食べすぎると今度はしょっぱいものが食べたくなりポテチまで…

これで太らないわけがない。もちろん頭ではわかっていました。

でも、食べる楽しみを覚えてしまった私は、何か(いや)なことがあったりイライラしたりすると、コンビニ等でお菓子(かし)を買い込んで食べることで幸せな気分になり、ストレスを発散(はっさん)しようとしてしまったのです。

不快な気持ちを食べるという快楽で打ち消そうとしていたのです。

ちなみに、私のようにストレスで一気に大量のものを食べてしまうことを「気晴(きば)らし()症候群(しょうこうぐん)」あるいは「むちゃ()症候群(しょうこうぐん)」というそうです。

ストレスで不安と空腹の区別がつかなくなる⁉

心理学者の市村(そう)(いち)さん・小澤(おざわ)まやさんの共著『心理学の先生が教える「読む」だけダイエット』には、以下のように書かれています。

人間はストレスがたまると“不安”と“空腹”の区別がつかなくなる…ストレスを感じると「どうしよう」「困った」というようなさまざまな不安を感じます。

この不安を(しず)めるために、自分の気持ちを(しず)める()わりに、食べることで()()わせる傾向がある…

そして特に注目すべき点は、ストレスを感じたときに正常な体重の人は「今日のランチは軽めでいいや…」と食欲が低減(ていげん)する傾向があるのに対し、太っている人は「イライラしちゃって食べないとやってられないわよ!」という具合(ぐあい)(せっ)(しょく)が増大しやすいという研究結果が出ているというところです。

こ、この「太っている人」ってまさに私のことじゃん!
だからストレスでイライラして食べすぎちゃったのか。

そういえば、太ってなかったときはストレスでむしろ食欲がなくなって()せちゃったこともあったような。

食べても幸せになるどころか問題を増やすだけ

でも食べることで幸せを感じられるのは、食べている間だけです。

むしろ食べれば食べるほど太っていき、ますます太った(みにく)い自分が(いや)になっていきました。

着られない洋服がどんどん増えて、おしゃれする気もなくなり、人前(ひとまえ)に出るのも(いや)になっていきました。
特に、写真を撮られるのがすごく(いや)でした。

かえって自分で問題を増やしてしまったのです。

自分を受け入れられないことがストレスだった!

本当は()せたいのに、どうしてストレス()いに走ってしまうんだろう。何がそんなにストレスになっているんだろう。

その原因を()(のぞ)かない限り、ストレス()いから(のが)れることはできません。そこで、ストレスの原因について自分なりに考えてみました。

確かに、仕事と勉強や家事の両立(りょうりつ)が難しくてストレスになるというのもありましたが、私の場合、太った自分を受け入れられないことが最大のストレスになっていたことに気づきました。

実は、私は大学に入るまで(まわ)りから()()ぎと言われるくらい()せていました。

それで、いつも()せていたころの自分と太った自分を比べてしまい、ぶくぶくと太っていく(みにく)い自分が(いや)で、どうしても自分を受け入れられず、知らず知らずのうちにそのことが私の中で大きなストレスになっていたのです。

太った自分を受け入れたら心が軽くなったー自己受容と自己肯定

本当は()せたいのに、太っている(みにく)い自分を受け入れられないことがストレスになって、ストレス()いして太っちゃうなんて! 

これはもう、太った自分を認めて受け入れるしかない。
もう太ってしまったことは仕方(しかた)ないんだ。

私はついに(はら)を決めて、今の太った自分を受け入れることにしました。

すると、ずっと頭から離れなかった、こんなのは本当の私じゃないという思いがスーッと消え、心がふっと軽くなりました。

今の私にできることから始めよう! 不思議と何だかやる気が()いてきました。

ま、身体(からだ)(ほう)は軽くなっていませんが(苦笑)

自己受容と自己肯定


日本人の自己肯定感の低さはかなり深刻(しんこく)です。文部科学省の調査(2009年~2011年)によると、「私は価値のある人間だと思う」と回答した日本の高校生はわずか36.1%だそうです。

ちなみに、アメリカは89.1%、中国は87.7%、韓国は75.1%です。日本では謙虚であることが美徳とされているため、文化的な理由も大きいとは思いますが。

叱られる子ども

おそらく多くの日本人は子どものころから、好き嫌いしちゃダメ、あれやっちゃダメ、これやっちゃダメ、間違(まちが)えちゃダメ、失敗しちゃダメ…と減点方式のダメ出し教育を受けてきたから、自己肯定感が低くなってしまったのではないかと思います。

その結果、多くの日本人は失敗したら恥(は)ずかしいからとチャレンジしなくなってしまったり、間違いや失敗を非難(ひなん)されるのを恐(おそ)れて自分に都合(つごう)の悪い事実を隠そうとしてしまったりするのではないでしょうか。

いろんなことに前向きにチャレンジしていけるので、自己肯定感が高いことは非常に重要です。

でも実際にはそう思っていないのに「私は価値のある人間だ」と自分に言い聞かせるのは「自己肯定」で、自分に嘘をつく生き方です。

これに対して「自己受容」は良いところも悪いところも含めて、今の自分をありのまま受け入れることです。

誰にでも欠点はあり完璧(かんぺき)な人なんていないので、自分の欠点を悲観する必要はありません。本当の自分はもっと完璧なんだと、自分に言い聞かせる必要なんてないのです。

自分に足りないものを見極(みきわ)めて、それを淡々(たんたん)と補(おぎな)っていけばいいし、自分の良いところはどんどん伸ばしていけばいい。そうやって理想の自分に近づいていけばいいのです。

幸せへの重要な第一歩―ありのままの自分を受け入れる」という記事でも書きましたが、良くないのは、今の自分を直視(ちょくし)せずに間違った努力をしてしまうこと。

早く結果を出そうと、よく考えずに手っ取り早い方法に手を出してしまうのです。

例えば、数学の試験で100点満点中40点くらいしか取れない生徒は、明らかに基本ができていません。

それなのに「本当の自分はこんなんじゃない、調子(ちょうし)が悪かっただけ」と自分の欠点を直視しない生徒は、90点や満点を取る優秀な生徒の真似(まね)をして応用問題を一生懸命解(と)こうとしてしまいがちです。

基本すらできていないのだから応用問題なんて解けるはずないのに。

努力する方向が間違っていると、結局自分の理想には近づけず「どうして私にはできないんだろう」と自己嫌悪(けんお)に陥(おちい)ってしまうだけです。

この悪循環から抜け出すためには、自分にとってベストな方法を見つけるために、今のダメな部分も含めた自分をありのまま受け入れる必要があるのです。

これからどうするか

千里(せんり)の道も一歩から。当たり前ですが、すぐに5キロ10キロ()せることはありえません。

かつての私は「明日目が覚めたらスリムになってるといいなぁ」なんて思いながらダイエットサプリメントを飲んでいたこともありましたが(汗)、人生そんなに甘くありません。

まずは今の太った自分を受け入れ、現状と理想の自分の差を少しずつ()めていくことにしました。

参考文献


『心理学の先生が教える「読む」だけダイエット』市村操一さん、小澤まやさん (2006年 三笠書房さん)
『まず動く~輝かしい人生をつかむために~』多湖輝(たごあきら)さん (2000年 光文社さん)
『失敗の科学 失敗から学習する組織、学習できない組織』マシュー・サイドさん、有枝 春さん訳(2016年 ディスカヴァー・トゥエンティワンさん)
『嫌われる勇気』岸見一郎さん、古賀史健さん(2013年 ダイヤモンド社さん)
『子どもの才能を引き出すコーチング』菅原裕子さん(2017年 幻冬舎さん)
『日本型組織の病を考える』村木厚子さん(2018年 KADOKAWAさん)
『「幸せ」について知っておきたい5つのこと』NHK「幸福学」白熱教室制作班さん(2014年 中経出版さん)