課題を分離して対人関係の悩みを解決し、人生をシンプルにする―人生のタスクと向き合う方法 STEP3

階段

前回の記事(STEP2)では、「人生のタスク」(対人関係の問題)と向き合い、自立して社会の中でうまくやっていくために、新しいライフスタイル(人生観や世界観など)を選びなおすことについて書きました。

STEP3では、課題を分離して他の人と「近すぎず遠すぎない」程よい距離感を保つことで、対人関係の悩みを解決し、人生をシンプルなものにしていきます。

 課題の分離
自分の課題と他人の課題を分離し、自分の課題には踏み込ませず、他人の課題にも踏み込まないことで、人生の荷物を軽くし、他の人と適度な距離を保つこと

対人関係の悩みを解決するために課題を分離するのは、自分が他の人の課題に土足で踏み込んだり、他の人が自分の課題に土足で踏み込んできたりして、対人関係のトラブルが起こることが多いからです。

課題の分離ができれば、他の人の課題に関わらなくなり自分の課題に専念できるので、自分の人生の荷物を軽くして人生をシンプルにできます。

他方で、何かを教えてあげようとする等、他の人の課題に関わろうとするのは、無意識のうちにその人を自分より下に見ている証拠です。

つまり、他の人の課題に手を出さないということは、その人を尊重して自分より下に見たりせずに横の人間関係(同じではないけれど対等)を築くことにつながっていくのです。

そうやって他の人と横の関係を築いていくと、他の人と適度な距離(近すぎず、手を伸ばせば援助できる距離)を保つことができるので、対人関係は激変します。

それでは、どうやって課題を分離したらいいのか考えていきたいと思います。

まず、これは誰の課題なのか考える

課題の分離は自分の課題と他人の課題を分離することですが、そもそも、ある課題が誰のものなのか、どうやって見分ければいいのかというと…

「その選択によってもたらされる結末を最終的に引き受けるのは誰か」を考えると、自分の課題と他人の課題を見分けることができます。

例えば、子どもの将来を考えて、子どもに勉強させることを親の課題だと考えている人もいるかもしれません。

でも子どもが「勉強しない」という選択をしたとき、その選択によってもたらされる結末(学校の成績があまり良くなくて希望の大学に入れない、高卒以上でなければ一般企業への就職は難しいことが多い等)を最終的に引き受けなければならないのは、親ではなく子どもです。

よって、勉強は子どもの課題なのです。

ただし、勉強が子どもの課題だからといって、親は子どもの自由にまかせて放っておいた方がいいというわけではありません。

親には親の課題があります。

まず子どもに、勉強すると選択肢が広がること(高校や大学、専門学校などに進学すれば将来の選択肢を増やすことができる)や、学校での学業という意味での勉強はしないで他のことに専念する(スポーツや音楽・芸能の道に進んだり、料理人などの技術職を目指したり、起業して会社を作ったり、ユーチューバーになって生計を立てたりする等)という選択肢もあることを教えます。

そのうえで、勉強あるいは他のことに専念したいなら、いつでも援助する用意があると伝えて相談しやすい雰囲気を作り、子どもを信じて辛抱強く見守ることです。

このように子どもと親の課題を分離すれば、子どもは勉強を自分の課題だと認識し、どうすべきなのか自分で考えて行動するようになります(愛のタスク)。

 愛のタスク
恋愛関係、家族との関係(特に親子関係)で、この人と一緒にいるととても自由に振る舞えると思える関係。簡単に解消できない関係なのでハードルが一番高い

親の重要な役割は、子どもに勉強させることではなく、社会でうまくやっていくためにはどうしたらいいのか(人間知)を学ぶための、自立に向けた「援助」なのです。

 援助
他者が自分に能力があると自信を持ち、自力で課題に立ち向かっていけるように働きかけること

自分の課題と他者の課題を分離して、他者の課題は切り捨てる

ある課題が自分の課題か他の人の課題か区別できたら、自分の課題と他の人の課題を分離し、他の人の課題は切り捨てます。

例えば多くの人は、他の人に嫌われたくないし、自分を認めてもらいたいので、他の人が自分のことをどう思っているかを気にします。

そして他の人に良く思われようと、ついつい他の人に合わせようとしてしまいます。

他の人の自分に対する評価も自分の課題だと思い込み、コントロールしようとしてしまうのです。

でも、他の人に認められることは、あくまで結果にすぎません。

認める認めないは他の人の自由(他者の課題)で、ときには他の人に認められないどころか、嫌われることだってあります。

自立して自由になるためには、誰かに嫌われることも覚悟して他の人に好かれようとしないことこそが、自分の課題なのです(嫌われる勇気)。

 嫌われる勇気
嫌われることもあることを恐れずに自由に自分の道を前に進んでいく勇気

会社や家庭、学校などの組織から解放されることや、お金に困らないことなどが自由なのではありません。

アドラー心理学では、自由とは、他の人から嫌われること(!)なのです。

誰かに嫌われているということは、この世界で他の人と共存しながら自分らしく自由に生きている証拠なのです。

みんなから好かれようとすると八方美人になってしまい、周りにも自分にも嘘をつくことになって自分らしく生きられません。そもそも、みんなから好かれることは不可能なのです。

 
筆歌
確かに、自分の能力や個性をいかして活躍されているスポーツ選手や芸能人は、多くの人に好かれて人気がある一方で、一部の人には妬まれたりして嫌われることもありますよね。

そんなわけで、他の人が自分のことをどう思うかは「他者の課題」であって、自分ではどうにもなりません。

そこで、他の人の自分に対する評価は「他者の課題」として切り捨てます。

そして、「自分の課題」としては、他の人に認めてもらおうとせず、嫌われることを恐れないようにします(嫌われる勇気)。

そうすれば、他の人に合わせる必要がなくなり、シンプルに自分らしく自由に行動できるようになります。

すると、対人関係のカードは自分が握ることになります。

他の人を変えることはできませんが、勇気を出して自分が変われば、「他の人の自分に対する評価が気になって自然に自分らしく振る舞えない」という対人関係の悩みから解放されます。

人生の荷物を軽くして、人生をシンプルにできるのです。

課題の分離に対する疑問

自分の課題に介入させない=他の人の好意を踏みにじることにならないか?

勉強を教えてくれると他の人に言われても断る等、自分の課題に介入させないことは、他の人の親切を拒絶して相手の好意を踏みにじっているようにも思えます。

でも、他の人の親切を拒絶するなんて!と考えるのは、親切心に対する見返りを求める発想です。親切を受けるか受けないかは本人の自由なのです。

自分の課題は自分の力だけで解決してこそ成長できるのであって、うまくいかなくてもすぐに誰かに頼ってしまったりせずに自立し、他の人と近すぎない適度な距離を保つことが重要なのです。

ただし、仕事などでどんなに努力しても自力で課題を解決できない場合にまで、かたくなに他の人の援助を拒んでしまうと、まわりに迷惑をかけてしまうこともあります

()そのようなときには、素直に自分一人では解決できないと認め、他の人の援助を受け入れることも必要だと思います(仕事のタスク)。

 仕事のタスク
仕事で成果を上げるために他の人と協力せざるをえない関係。あくまで仕事をしている間だけの関係で、仕事を離れれば解放されるので実はハードル低め

他者の課題に介入しない=他の人を助けず冷たいのではないか?

友達が数学の問題を解けなくて悩んでいるのに何もしない等、他の人の課題に介入しないことは、他の人が困っていても助けず冷たいようにも思えます。

でも、頼まれもしないのに教えようとしたりして、他者の課題に「介入」すべきではありません。

 介入
他者の課題に対して土足で踏み込んでいくような行為のこと。善意で相手を望ましい方向に導こうとしているが、その実は相手をコントロールしようとすること

なぜなら、他の人の課題に介入してしまうのは、無意識のうちに人間関係を縦に見て、他の人を自分より下だと思っていることもあるからです。

助けを求められていないのに他の人の課題に介入すると、知らず知らずのうちにその人のプライド(自尊心)を傷つけてしまうこともあり、返って猛反発を受けてしまうこともあるのです。

そんなときは「もし必要ならいつでも相談にのるよ。気軽に声かけてね」と相談しやすい雰囲気を作るようにすれば、その友達を尊重しつつ、助けを求められたときには力になれます。

このように「近すぎず遠すぎない、手を伸ばせは援助できる距離」を保つようにすれば、友達とうまくやっていくことができます(交友のタスク)。

 交友のタスク
仕事を離れた、もっと広い意味での友人関係。交友関係に踏み出すか、踏み出した関係を深めるかは、自分次第で勇気がいるので実はハードルは高め

まとめ

このように、課題を分離して、自分の課題に介入させず、他の人の課題に介入しなければ、他の人と横の人間関係(同じではないけれど対等)を築いて、他の人との適度な距離(近すぎず、手を伸ばせば援助できる距離)を保つことができます。

すると、他の人とうまくやっていくことができ、対人関係の悩みが解決して、人生がシンプルになり身軽になれます。

 

参考文献

『嫌われる勇気』岸見一郎さん、古賀史健さん(2013年 ダイヤモンド社さん)
『幸せになる勇気』岸見一郎さん、古賀史健さん(2016年 ダイヤモンド社さん)