間違いは指摘しちゃダメ?親切のつもりが嫌われてしまった。私はどうすればよかったのか

悩む女性

間違いを指摘することはよくあることだと思いますが、時と場合によっては、人間関係を悪化させてしまうことがあります。

誰かの間違いに気づいたとき、どんなふうに対応すれば良好な人間関係を築いていけるのか、考えてみたいと思います。

親切のつもりが…

とある会社で働いていたときのこと。

同僚の一人が作業をしながら「これは○○の原理で~」と話し始めことがあったのですが、明らかに「○○の原理」というのは間違いで、正しくは「△△の原理」でした。

間違っているのに正しいと思い込んでいるようなので、また別の機会にその人が間違えて恥をかかないようにと、親切のつもりで「それは○○の原理じゃなくて△△の原理だと思いますよ」と間違いを指摘(してき)しました。

すると一瞬その人の表情が曇ったと思ったら、聞こえなかったふりをして間違いを認めず、また「これは○○の原理で~」と言い始めたのです。

そして、それからというもの、その同僚から何となく距離を置かれるようになってしまいました(涙)

沈黙は金―尊敬とは「ありのままにその人を見る」こと

私はその人のためを思って善意で間違いを指摘したつもりでしたが、オフィスで他の人の前で間違いを指摘すること自体が、その人に恥をかかせてしまう行為だったのです。

私はその人の役に立つどころか、その人のプライドを大きく傷つけてしまいました。

世界的名著『人を動かす 完全版』には、著者のD・カーネギーさんが他人の間違いを指摘して失敗したときのエピソードについて、次のように書かれています。

「ハムレットの第5幕第2場だ。でも、私たちはお祝いの席に招かれていたんだ。彼の間違いを人前にさらす必要がどこにある? それで彼が好意を抱くとでも? 彼の面目を守ってやればいいじゃないか。彼は君に意見なんて求めてない。そんなことはしたくなかったんだ。議論してどうなる? 常に丸く納めるんだ」

彼はすでに亡くなってしまいましたが、その教訓はずっと覚えています。

根っからの議論好きの私には、どうしても必要な教訓でした。

実は私もわりと議論好きな方で、自分が正しいと思うと、ついつい相手を同調させようとしてしまうところがあります。

でも他の人とうまくやっていきたいなら、黙っていることが最良の手段になるときもあります。

「沈黙は金」なのです。

尊敬とは「ありのままにその人を見る」こと


一般には、「尊敬」は人格や思想、業績、行為などの優れた人を尊び敬うことをいいます。

しかしアドラー心理学では、「尊敬」とは、この世界にたった一人しかいない、かけがえのない「その人」をありのままに見て、自分の価値観を押しつけずに、その人が、その人らしく成長・発展していけるよう気づかうことと考えます。

つまり、その人が「その人であること」に価値を置くことが「尊敬」であって、その人を操作しようとしたり矯正しようとしたりする態度に「尊敬」はありません。

「尊敬」のないところに良好な対人関係は生まれませんし、良好な対人関係を築けていなければ、どんな言葉も相手には届きません。

実際、私は同僚のことをありのままに見ようとせず、自分の考えを押しつけて相手を変えようとし、「尊敬」できていませんでした。

だから、私の言うことに耳を傾けてもらえなかったのです。

嫌われずに間違いを指摘する方法

では、どうしたら同僚は私の言葉に耳を傾けてくれたのでしょうか。

その人を変えようとするのではなく、私が変わるべきでした。

私の悪い癖は、思ったことをストレートに言ってしまうこと。

間違っていると「間違ってますよ」とストレートに事実をそのまま伝えてしまうのです。

全く悪気はないんです。

でも時には事実をそのまま伝えてしまうと、相手の面目をつぶしてしまったりして、知らず知らずのうちに傷つけてしまうこともあります。

そこで、先ほどご紹介した『人を動かす 完全版』によると、相手の間違いを遠回しに間接的に指摘したり、むしろ自分の方が間違ってるかもというスタンスで伝えたりするといいそうです。

例えば、こんな感じでしょうか。


「すみません。私の勘違いかもしれないんですけど、それってもしかしたら△△の原理かもしれないなと思いまして…」

これからどうするか

私は以前に校正という誤字・脱字などを修正する仕事をしていたことがあるので、街なかを歩いていたりテレビやYouTubeなどを見ていたりすると、今でも職業柄すぐに誤字・脱字や文法がおかしい表現などが目に飛び込んできてしまいます。

そして「直したい!」という衝動に駆られてしまうのです(汗)

でも間違いを指摘しても自分が自己有用感を得て満足するだけで、良いことはありません。

それどころか、間違いを指摘された相手の自尊心を傷つけ、敵を作ってしまうこともあるかもしれないのです。

どうしても親切心から間違いを指摘したいときは、伝え方に十分配慮し、謙虚な姿勢を忘れないよう心がけていきたいと思います。

参考文献


『人を動かす 完全版』D・カーネギーさん、東条健一さん訳(2016年 新潮社さん)

『幸せになる勇気』岸見一郎さん、古賀史健さん(2016年 ダイヤモンド社さん)

『嫌われる勇気』岸見一郎さん、古賀史健さん(2013年 ダイヤモンド社さん)