心理的にも物理的にも捨てづらいものほど捨てると効果的!家の中が片付くだけでなく、お金も貯まる

スッキリ

モノを捨てられないのは「授かり効果(保有効果)」のせい⁉

「すべては使うか使わないか。現状を認めてモノを手放すと幸せになれる」という記事で、使わないものを捨てずに持っていたという話を書きましたが…

確かに、それらを捨てられなかったのは、使っていないという現実から目を背けていたのもありましたが、他にも理由がありました。「(さず)かり効果(保有効果)」です。

(さず)かり効果(保有効果)とは、行動経済学における心理バイアスの一つで、自分が手に入れたものを高く評価し、それを手放(てばな)したくないと考えることです。

一般に、人は何かを手に入れると、それを失って損したくないと思うようになること(損失回避(かいひ))が原因とされています。

リサイクルショップにいらないモノを持って行って売ろうとしたら、査定(さてい)(がく)が自分の予想に反して低くて、心の中で「えー、それはないでしょ(涙)」と思ってしまいました。

売ろうとしているのは自分がいらないモノなのに!

まさに、これこそ「(さず)かり効果(保有効果)」が原因です。

自分が売ろうとしているモノの市場価値が低いとき、買い手はそれを高く評価してくれません。

そして、自分もそれをいらないと思っているのなら、論理的(ろんりてき)には買取価格が低くても納得できるはずです。

でも「(さず)かり効果」のせいで、買取価格が低いことを頭では理解できても、気持ちの上ではなかなか受け入れられないのです。

特に買ったときの値段が高かったものは、売るのをかなり躊躇(ちゅうちょ)してしまいました。

モノの値段に関係なく授かり効果はあるので、高価なものはなおさら「やっぱり売るのはもったいないかも」と思ってしまうわけです。

それでも()えて売ることで痛みを感じると、その痛みが大きければ大きいほど、もう二度とこんな思いはしたくないと慎重(しんちょう)に買い物するようになり、余計なモノを買わなくなりました。

モノが増えにくくなると家の中がスッキリして掃除しやすくなりますし、モノを収納するためのスペースや、モノを管理するための時間・労力・気力、お金も節約できて良いこと()くめです。

大きくてかさばるものは物理的にも捨てるのが難しい

特に大きくてかさばるものは、思いきって処分したときのスッキリ感は絶大です。

ダイエット中にどうしても欲しいとせがんでクリスマスプレゼントに買ってもらったルームランナー。

実際に使ってみると音があまりにもうるさくて、近所迷惑になってしまうからと、ほとんど使わずに放置していました(涙)

家の中でかなりのスペースを占有していたので、掃除のたびに邪魔(じゃま)だなと思いつつも、プレゼントでもらった高価なものだし、大きくて持ち運ぶのが大変だからと捨てられずにいました。

でも海外引越を機に処分せざるを得ず、体育館に寄贈(きぞう)し引き取ってもらいました。

ピアノを習っていた頃に買った電子ピアノも、忙しくてレッスンを受けられなくなってからは使わなくなり、使っていないのにスペースばかりとっていました。

高い買い物でしたし、いつか時間ができたらまたピアノの弾き語りをしたいと思い、ピアノが弾ける素敵な私をイメージして捨てられずにいました。

でも、これも海外引越を機に親戚(しんせき)にもらってもらい処分しました。

どちらも家の中でかなりのスペースをとっていたので、処分してからは掃除しやすくなり、スッキリしました。

それからというもの、大きくてかさばる家具や家電などを買うときは慎重に検討するようになりました。

「サンクコストの呪縛」と人生の片付けー自己受容と断捨離

「幸せのお手本?本当の幸せって何だろう…」という記事や、「試験勉強=弱点克服!できない自分と向き合う」という記事にも書きましたが、20代の頃は難関資格試験の勉強をしていました。

受験勉強をやめたとき、長年使っていたテキストを処分することにしましたが…

それまで自分が勉強に投資してきた7年間という長い辛い年月のことを考えると、行き()まってしまって受験勉強をやめたのに、ここで勉強をやめてしまったらこれまでの努力が無駄になってしまうと、自分の気持ちに()()りをつけるのに苦労しました。

超音速旅客機(りょかくき)「コンコルド」の商業的失敗で有名な「サンクコストの呪縛(じゅばく)」といわれるものに、見事にハマっていたのです。

サンクコスト(埋没(まいぼつ)費用)とは、途中で事業を白紙(はくし)に戻したとしても回収できない費用のことで、人はある事業にそれ以上投資しても損失が出るだけだと分かっていながら、それまで投資してきた額が大きければ大きいほど、もとを取り戻したいと、その事業を中止する決断ができない傾向があることをいいます。

あともう少し頑張(がんば)れば試験に合格して今まで投資してきた時間を取り戻せるんじゃないかという思いがこみ上げてきて、20代という人生で一番楽しい時期に7年間も費やした時間や労力を考えると、まだ使うかもしれないとテキストをなかなか手放せなかったのです。

そんなわけで、テキストが手元にあると未練が残ってしまうので、勇気を出して処分することにしました。

愛用してきた教材を処分するのは辛かったですが、思い切って古本屋さんに持って行くと、有難(ありがた)いことに「これは最新版ではないけど、どれも良い先生の本だから」とまとめて高値で買い取ってくれました。

親切な店主は私の複雑な心境を()み取ってくれたのかもしれません。

高価で分厚くて重いテキストを処分したら、机の上や本棚の中がスッキリしただけでなく、それまで自分を呪縛(じゅばく)していたものから解放されて、心の中まで片付きました。

『もっと断捨離アンになろう!モノを捨てて自分をリセット!』(鈴木淳子さん著、川畑のぶこさん原案・監修)には、次のように書かれています。

モノとの関係を問い直しながら断捨離を進めていくにつれて、それらのモノの奥にひそむ、今まで気がつくことのなかった己の心理を垣間見たという報告が山のようにありました。モノを片づけるということは、ただの片づけに終わらず、心の片づけ、ひいては、人生の片づけだということに気づいた方がたくさんいます。つまり、効果的に部屋の整理をするということは、効果的に心や人生の整理をすることなのですね。

断捨離(だんしゃり)は、今の自分にとって本当に必要なものや大切なものを見極めて自分を知ることであり、単なる片付けではなく、心の片付け、ひいては、人生の片付けなのです。

自己受容と断捨離
「幸せへの重要な第一歩―ありのままの自分を受け入れる」という記事「自己受容ダイエット―まずは太っている自分を受け入れてストレスをなくす」という記事にも書きましたが、アドラー心理学では、ありのままの自分を受け入れることを「自己受容」といいます。

自分を肯定しようとする「自己肯定」とは違います。

今の自分にとっていらないものを捨てることは、ありのままの自分を受け入れること(自己受容)です。

他方で、いらないものを捨てられないのは、無理に自分を肯定しようとして現実を受け入れられないからです。

かつての私は、せっかく買ってもらった高価なルームランナーを、音がうるさくて近所迷惑になるからと使わずに放置して見て見ぬふりをしていました。

自分の失敗を認めようとせず、環境のせいにして自分を正当化しようとしていたのです。

そんな私もついに自分の失敗を認めて、海外引越を機にルームランナーを処分しました。

断捨離には、自分の失敗を認める勇気、「自己受容」が必要なのです。

 

これからどうするか

いらないモノを処分する大変さを痛感した私は、自分なりのルールを決めることにしました。

それからは、マイルールを作って買い物するときに気をつけるようにしています。

【買い物をするときに留意すること】

・「使える」を基準に10年以上使う前提で買う
・大型の家具や家電など大きくてかさばるものを買うときは慎重に検討する
・なるべく捨てるときにお金がかかったり、燃えないゴミになったりしないものを買う
・収納スペースが常に3割空いているようにする
(収納スペースがないのに買わない、収納スペースがあるからといって買わない!)
・通信販売やネットショップで安易にモノを買わない
・衣類などの布製品は、洗濯機で洗濯できるものを選ぶ
・充電式のマウスなど、なるべく充電式の製品を買う
・環境にやさしいものを買う(洗剤など)
・旅行ガイドは最新版だけしか使えない など

参考文献

『断捨離アンになろう!モノを捨てれば福がくる』鈴木淳子さん著, 川畑のぶこさん原案・監修(2010年 ディスカヴァー・トゥエンティワンさん)
『もっと断捨離アンになろう!モノを捨てて自分をリセット!』鈴木淳子さん著、川畑のぶこさん原案・監修(2011年 ディスカヴァー・トゥエンティワンさん)
『一番わかりやすい整理入門 第3版』澤 一良さん、ハウスキーピング協会さん監修(2007年 ハウジングエージェンシーさん)
『1週間で8割捨てる技術』筆子さん(2016年 メディアファクトリーさん)
『幸福途上国ニッポン』目崎雅昭さん(2011年 アスペクトさん)
『明日の幸せを科学する』ダニエル・ギルバートさん、熊谷淳子さん訳(2013年 早川書房さん)